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【経営管理ビザ⑤】赤字決算の場合の更新許可申請について

記事作成日:2024年5月3日
最終更新日:2024年5月3日
文責(執筆):行政書士 野村 篤司

1.在留期間更新許可申請において「事業の継続性」が問題となる事例

事業活動においては様々な要因で赤字決算となり得るところ、当該事業の継続性については、今後の事業活動が確実に行われることが見込まれることが必要です。しかしながら、実際の場面においては、当該事業の経営・管理という在留活動を継続して行うことができるかという観点から、赤字決算等が今後の事業活動の継続性に疑問を生ぜしめる場合があり得る反面、通常の企業活動の中でも、諸般の事情により赤字決算となっていても、在留活動の継続性に支障はない場合も想定されます。よって、事業の継続性については、単年度の決算状況を重視するのではなく、貸借状況等も含めて総合的に判断することが必要であることから、直近二期の決算状況により次のとおり取り扱うこととします(「経営・管理」の在留資格の明確化等について/出入国在留管理庁)。

 

1-1.直近期又は直近期前期において売上総利益が「ある」場合

a 直近期末において欠損金がない場合

 直近期において当期純利益があり同期末において剰余金がある場合には、事業の継続性に問題はありません。また、直近期において当期純損失となったとしても、売上総利益があることを前提とし、剰余金が減少したのみで欠損金が生じないものであれば、必ずしも、当該事業を継続する上で重大な影響を及ぼすとまでは認められないことから、この場合においても事業の継続性を認めることとします。したがって、直近期末において剰余金がある場合又は剰余金も欠損金もない場合には、事業の継続性があると認めることとします。

b 直近期末において欠損金がある場合

(ア)直近期末において債務超過となっていない場合

 事業計画、資金調達等の状況により、将来にわたって事業の継続が見込まれる可能性を考慮し、今後1年間の事業計画書及び予想収益を示した資料の提出を求めることとし、事業が行われていることに疑義があるなどの場合を除いて、原則として事業の継続性があると認めます。ただし、当該資料の内容によっては、中小企業診断士や公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が評価を行った書面(評価の根拠となる理由が記載されているものに限る。)の提出を更に求める場合もあります。

 

(イ)直近期末において債務超過であるが、直近期前期末では債務超過となっていない場合

 債務超過となった場合、一般的には企業としての信用力が低下し、事業の存続が危ぶまれる状況となっていることから、事業の継続性を認め難いものですが、債務超過が1年以上継続していない場合に限り、1年以内に具体的な改善(債務超過の状態でなくなることをいう。)の見通しがあることを前提として事業の継続性を認めることとします。

 具体的には、直近期末において債務超過ですが、直近期前期末では債務超過となっていない場合には、中小企業診断士や公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が、改善の見通し(1年以内に債務超過の状態でなくなることの見通しを含む。)について評価を行った書面(評価の根拠となる理由が記載されているものに限る。)の提出を申請者に求めることとし、当該書面を参考として事業の継続性を判断することとします。

 

(ウ)直近期末及び直近期前期末ともに債務超過である場合

 債務超過となって1年以上経過しても債務超過の状態でなくならなかったときは、事業の存続について厳しい財務状況が続いていること及び1年間での十分な改善がなされていないことから、原則として事業の継続性があるとは認められません。ただし、新興企業(設立5年以内の国内非上場企業をいう。以下同じ。)が独自性のある技術やサービス、新しいビジネスモデル等に基づき事業を成長させようとする場合、設立当初は赤字が続くことも想定されます。そのため、新興企業については、以下の書類の提出を申請人に求めることとし、これら提出書類の内容を踏まえた結果、債務超過となっていることについて合理的な理由があると判断される場合には、事業の継続性について柔軟に判断することとします。

 

 ○ 中小企業診断士や公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が、改善の見通し(1年以内に債務超過の状態でなくなることの見通しを含む。)について評価を行った書面(評価の根拠となる理由が記載されているものに限る。)

 ○ 投資家やベンチャーキャピタル、銀行等からの投融資、公的支援による補助金や助成金等による資金調達に取り組んでいることを示す書類

 ○ 製品・サービスの開発や顧客基盤の拡大等に取り組んでいることを示す書類

 

1-2.直近期及び直近期前期において共に売上総利益が「ない」場合

 企業の主たる業務において売上高が売上原価を下回るということは、通常の企業活動を行っているものとは認められず、仮に営業外損益、特別損益により利益を確保したとしても、それが本来の業務から生じているものではありません。単期に特別な事情から売上総利益がない場合があることも想定されるところ、二期連続して売上総利益がないということは当該企業が主たる業務を継続的に行える能力を有しているとは認められません。したがって、この場合には原則として事業の継続性があるとは認められません。

 ただし、新興企業が独自性のある技術やサービス、新しいビジネスモデル等に基づき事業を成長させようとする場合、設立当初は赤字が続くことも想定されます。そのため、新興企業については、以下の書類の提出を申請人に求めることとし、これら提出書類の内容を踏まえた結果、売上総利益がない状態となっていることについて合理的な理由があると判断される場合には、事業の継続性について柔軟に判断することとします。

 

中小企業診断士や公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が、改善の見通し(1年以内に売上総利益がない状態でなくなることの見通しを含む。)について評価を行った書面(評価の根拠となる理由が記載されているものに限る。)

 

○ 投資家やベンチャーキャピタル、銀行等からの投融資、公的支援による補助金や助成金等による資金調達に取り組んでいることを示す書類(十分な手元流動性があるなど当面の資金調達の必要性がない場合は当該状況を示す書類)

 

○ 製品・サービスの開発や顧客基盤の拡大等に取り組んでいることを示す書類

 

2.「中小企業診断士や公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が、改善の見通し(1年以内に売上総利益がない状態でなくなることの見通しを含む。)について評価を行った書面(評価の根拠となる理由が記載されているものに限る。)」について

この書類を「経営改善報告書」や「改善見通評価書」などと言います

当該書類の具体的な分量や書き方(指定様式)などは公開されておりませんので、「任意様式」で構いません。ただし、「公的資格を有する第三者」であることが必要です。なお、単に「行政書士」というだけでは、「企業評価を行う能力を有するものと認められる」という部分で除外されてしまいますので、行政書士が当該文書を作成することはできません。申請取次を行っている時点で「第三者」とは言い難いという観点からもNGです。

 

なお、「中小企業診断士」と「公認会計士」は「例示」ですので、「税理士」でも認められます。そのため、「顧問税理士」に書類を書いてもらうことが多いようです。なお、顧問税理士が存在しない場合や、存在しても経験がないなどで書類の作成に協力してもらえないケースも多々ございます。

 

そのような場合は、「経営管理ビザ相談センター™」を運営する当法人にご相談下されば、対応可能な「公認会計士」「中小企業診断士」「税理士」等を手配させて頂きます。お気軽にご相談くださいませ。

 

※当然ながら、専門的な見地から判断した結果「(現状のままでは)改善の見通し無し」という回答になる場合もあり得ますので、「改善計画」そのものについては、しっかりとご用意されたうえでご相談くださいませ。

 

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