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【経営管理ビザ④】よくある不許可理由5つとその対応方法

記事作成日:2024年5月3日
最終更新日:2024年5月3日
文責(執筆):行政書士 野村 篤司

1.在留資格「経営・管理」に係る審査結果が「不許可」になる事例とは

本記事では、残念ながら「不許可」になってしまう事例について、筆者の10年以上に基づく経験をもとにご紹介いたします。そもそも不許可だったことが数えられるほどしかないため、筆者の経験ではほぼ全ての不許可理由を網羅できると存じます(但し、明らかに要件を具備していない事例などは当たり前すぎるので除きます)。

 

なお、「不許可」になったとしても、「再申請」又は「再々申請」で「許可」に転じることも珍しくありません。そのため、万が一「不許可」が出てしまっても、「なぜ不許可になったのか」について、しっかりと管轄の入国管理局へ確認を行い、その不許可理由を払しょくできるのであれば、あきらめずに再申請するようにしましょう。

 

それでは、1つずつ、不許可理由とその対応方法について解説していきます。

 

本記事では、最も事例が多い「新たに会社を設立した場合」を想定しております。「管理者類型」ではなく、「経営者類型」での申請における不許可理由となりますので、ご留意くださいませ。

 

よくある不許可理由その1:申請人の過去に「犯罪歴」や「不法滞在歴」がある

本来、事業計画の中身や許可要件とは関係ない部分ですが、これが最も多いので最初にご紹介させて頂きました。筆者が申請取次を受任する場合、過去に犯罪歴等がないかを必ずヒアリングしますし、申請書の記載項目にも該当箇所の記載があるのですが、「犯罪歴を隠して」当方へ依頼をされ、結果的に筆者も入管側からの不許可理由の回答の際に初めて知らされるという事例です。申請人本人に「やましい気持ち」があるのかもしれませんが、こういった事例では残念ながら不許可になる場合がほとんどです。

 

 

<対応方法>

「特例期間(※在留期限から2か月以内であって、在留資格審査中である期間)」を過ぎてしまうときは、やむを得ず「帰国」し、少し期間を置いてから「在留資格認定証明書交付申請」という形でのリベンジになります。なお、これは日本人でも同じですが、「刑の消滅」と言って、罰金刑等の支払いから「5年」を経過すると、前科がなくなるとともに、犯罪人名簿からも前科の記載が削除されます。過去の犯罪歴があっても、永年不許可になるわけではございません。但し、過去の犯罪が重い場合や頻度が高い場合は、やはり不許可の可能性が高いと言わざるを得ませんので、交通違反1つであっても、法を犯さないように日頃から注意するようにして下さい。不許可理由としては、最も再申請が難しい事例ですので、基本には、「一時帰国をしたうえで、日を置いてから改めて申請する」という対応方法が最善と考えます。

 

よくある不許可理由その2:「500万円」の資金形成過程が不透明

次に多いのは「資金形成過程」です。マネーロンダリング防止の観点からも、その原資が「犯罪等の収益から生まれたお金」であってはいけません。また、自己の預貯金であると偽って、実際には親族や知人から「一時的に借りて、すぐに返すお金」であってもいけません。これは「見せ金」と呼ばれ、会社法でも厳しく罰せられます。

 

なお、必ずしも自己資金である必要はないため、贈与や真正な「金銭消費貸借契約」が存在しているケースは問題がありません。「資金の形成過程」について、合理的な説明がないときは、「不許可」となってしまいます。

 

 

<対応方法>

そもそもが犯罪によって得たお金だった場合は論外ですが、「説明不足」であるときは、「合理的な説明」を強化すれば足ります。「貯蓄で貯めました」という理由だけの場合、貯蓄を開始した時からの家計の収支状況や過去の預貯金推移表を銀行からもらうなどして、貯蓄残高がたまっていったことを丁寧に立証していきます。筆者が申請取次を行う場合は、最初の申請段階から資金形成過程を丁寧に説明していますが、この部分については、近年、かなり厳しく判断されるようです。

 

「貯蓄」を資金形成の理由とする場合においては、しっかりと過去の通帳の写しや家計簿等も全て開示したうえで、可能な限り合理的な説明をし直す、というのが最善の対応方法と考えます。

 

よくある不許可理由その3:「事業所」の不適格(他の事業所との共同使用など)

筆者が経験したケースで、とある賃貸事務所について、事業所たる設備を構えたデスク回りや看板等の写真をきちんと貰って、賃貸借契約書の写しももらって、現地確認もして、さらに賃料の支払い実態も全て確認したものの、「他の外国人経営者(別会社)もそこを賃貸中になっていた」ケースがありました。共同使用の相手方もまだ申請段階だったためか、これはさすがに外形的にわからない状況でしたが、どうも仲のいい外国人同士(全くの他人ではなく知人)で、「共同使用(シェアオフィス)」状態にあったようでした。それ自体は違法ではないために、特に依頼者たる外国人本人からも申告を受けることなく申請に至りましたが、「事業所について独立性がない」ということで不許可になりました。

 

但し、不許可後においては、しっかりと経費の按分規定や物理的な壁を設けてもらうことで、事業所の独立性を確保し、再申請によって無事に許可されました。「経費節約」の観点から、事務所をシェアしたいというニーズは理解できますし、それ自体はなんら違法ではないのですが、在留資格申請上は「事業所」について独立性が求められております。なお、コワーキングスペース等の事業所として求められる要件については、別記事(【経営管理ビザ⑪】「自宅兼事業所」が認められる場合とは)で詳しく解説致します。

 

 

<対応方法>

事業所の共同利用はできるだけ解消し、解消が難しいときは、物理的なパーテーション工事や経費按分に関する合意締結などで「独立性」を確保することが最善の対応方法となります。できるだけ当初から独立した事業所を確保するように準備しましょう。

 

よくある不許可理由その4:収支計画上、資金繰りが出来ていない(資金ショートしている)

筆者がまだ開業して経験が浅い頃でしたが、これは、会社設立時に用意した「500万円」について、親との間で結んだ「金銭消費貸借契約」が「1年後に全額を一括返済」となっていた事例です。これ自体は当事者間の合意が真正なものであれば、無利息であっても特になんら問題はない契約なのですが、「収支計画書(表)」において、返済予定月において、「現預金残高が500万円に達していなかった」(=資金ショート)ため、不許可になりました。実際には、申請人本人も、その時はまた親に交渉して、返済期日を伸ばしてもらうなどの予定があったと思いますし、私もそこまでのつじつまを合わせることを考えられていなかったのですが、不許可理由を聞いた時には、驚きました。

 

但し、この事例では、貸主が実の親であったことから、返済期間を1年から5年に延ばしてもらってことで、再申請ですぐに許可されました。資本金について「借りて用意する」こと自体は決して珍しくないことですから、こういった「返済計画と収支計画の適合」についても注意するようにしてください。

 

 

<対応方法>

金銭消費貸借契約のまき直し(返済期日の変更)などで、余裕を持った資金繰りに修正することで対応が可能です。

 

よくある不許可理由その5:「単純労働」が「50%以上」を占める(経営業務が主ではない)

まず大前提として、在留資格「経営・管理」において、経営者たる申請人自らが、「現業的活動」をすること自体は認められています。例えば、「飲食店経営(中華料理店等)」を営む場合において、経営者自らが、レジ打ちをしたり、料理の調理や提供をしたり、掃除や洗い場を担当したりといったことです。ただ不許可になるケースでは、「その業務割合が50%以上を占め、主たる活動内容が事業の経営とは言えない」とされるケースです。

 

他にも事例を挙げるとすれば、例えば、「タイ古式マッサージ」等の「リラクゼーション施設」を外国人が経営するケースは少なくありません。このような事業形態において、経営者自らが施術することは認められるものの、従業員を雇うことなく、施術の時間が経営者としての経営業務を上回っているような事例です。経営者としては「人件費を抑えたい」という想いがあるでしょうし、これが身分系在留資格(永住者、定住者、日本人の配偶者等)なら何ら問題がないのですが、在留資格「経営・管理」はあくまで「事業の経営」を目的とした在留資格ですので、「単純労働が大半」と判断される場合は、不許可になってしまいます。

 

 

<対応方法>

このような不許可事例では、正社員ではなく、短時間アルバイトを雇ったりして、経営業務の比率を50%以上となることを明確にすれば、再申請で許可される場合がほとんどです。そのため、資金に余裕があるのであれば、最低限の雇用を確保してから、再申請するように対応しましょう。なお、雇い入れた方の就労開始については、申請人の在留資格が許可されてからを条件とすることも可能です(これを停止条件付雇用契約と言います)。なお、当初から「不許可」になることが心配な場合は、当初から雇用を確保するようにした方が安心ではあります(※固定費を増やしたくないという想いは、筆者も経営者ですのですごくよくわかります!)。

 

2.再申請で許可を狙うには、「不許可理由のヒアリング」がとにかく大事!

不許可理由のヒアリングには、入管法の知識が必要不可欠です

前述のように、「不許可」が出たとしても、きちんと対応すれば「再申請」や「再々申請」で「許可」が得られることは決して珍しくありません。但し、「不許可理由をきちんとヒアリングして、的確に対処すること」がとても重要です。何が論点になっているかがわからないと、適切な対応が出来ず、何度申請し直しても、不許可理由が解消されずに、不許可が続いてしまうような事態も発生かねません。

 

行政書士に依頼せずに、在留資格「経営・管理」の申請に係る「不許可」が出てしまった場合は、「不許可のヒアリング段階から」行政書士に支援を依頼することをお勧めします。もちろん当法人でも構いませんので、お気軽にお問合せ下さいませ。

 

在留資格「経営・管理」に関するご相談は、行政書士法人エベレスト!

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【経営管理ビザ①】在留資格「経営・管理」の許可要件
【経営管理ビザ②】申請手続きの流れ・スケジュール
【経営管理ビザ③】事業計画書の提出要否と書き方について
【経営管理ビザ④】よくある不許可理由5つとその対応方法
【経営管理ビザ⑤】赤字決算の場合の更新許可申請について
【経営管理ビザ⑥】個人事業主でも許可されるか
【経営管理ビザ⑦】合同会社(持分会社)でも許可されるか
【経営管理ビザ⑧】従業員の雇用が求められる場合とは
【経営管理ビザ⑨】飲食店営業の場合の注意点5つ
【経営管理ビザ⑩】経営改善報告書とは何か(提出が必要な事例)
【経営管理ビザ⑪】「自宅兼事業所」が認められる場合とは
【経営管理ビザ⑫】「資本金」はいくらとするべきか
【経営管理ビザ⑬】不動産業(宅地建物取引業)で許可を得るには
【経営管理ビザ⑭】「旅館業」で許可を得るには
【経営管理ビザ⑮】永住許可申請への変更を目指す際の注意点
【経営管理ビザ⑯】60歳以上であっても許可されるか
【経営管理ビザ⑰】高度専門職(経営・管理)とは
【経営管理ビザ⑱】法人の役員は何名でもいいのか
【経営管理ビザ⑲】経営者が出資しない場合でも許可されるのか(出資要件について)
【経営管理ビザ⑳】在留資格「家族滞在」で家族を呼ぶことができるか
【経営管理ビザ㉑】法人名義の銀行口座の開設について
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