事業再構築補助金「グリーン成長枠」について
事業再構築補助金の新類型として「グリーン成長枠」が創設されました。
「事業再構築補助金公募要領」(2ページ)では、『ガソリン車向け部品から電気自動車等向け部品製造への事業転換のように、グリーン分野での事業再構築を通じて高い成長を目指す事業者を対象に、従来よりも補助上限額を引き上げ、売上高減少要件を撤廃した新たな申請類型を創設することで、ポストコロナ社会を見据えた未来社会を切り開くための取組を重点的に支援していきます。』と記載されており、グリーン分野に取り組んで欲しい経済産業省・日本政府の意図が伺えます。
なお、具体的な「グリーン成長枠想定事例集」も公開されておりますので、以下にアップロードいたします(クリックで閲覧及びダウンロードが可能です)。
本記事にて、「グリーン成長枠」の特徴をしっかりと抑えていきましょう。
事業再構築補助金「グリーン成長枠」の概要について
事業再構築補助金「グリーン成長枠」の概要は上記の通りです。補助金額が最大1.5億円というのは経済産業省・日本政府が力を入れていることがよくわかります。「グリーン成長枠」のより詳しい説明のため、「メリット」「デメリット」に分けて、以下に説明します。
事業再構築補助金「グリーン成長枠」のメリット(良いところ)
グリーン成長枠のメリット①売上高等減少要件を満たす必要がない!
事業再構築補助金「グリーン成長枠」における要件は、以下のとおりであり、「売上高等減少要件」は要件とされていないため、当該要件は満たす必要がありません。つまり、(制度としては)設立して間もない企業(コロナ禍後に創業した企業)であっても、申請することが出来る点に大きな特徴があります。
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【事業再構築要件】
①事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること
【認定支援機関要件】
②事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること。補助金額が 3,000 万円を超える案件は認定経営革新等支援機関及び金融機関(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみ でも可)と策定していること
【付加価値額要件】
③補助事業終了後 3~5 年で付加価値額の年率平均 5.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均 5.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること
【グリーン成長要件】
④グリーン成長戦略「実行計画」14 分野に掲げられた課題の解決に資する取組であって、その取組に関連する 2 年以上の研究開発・技術開発又は従業員の一定割合以上に対する人材育成をあわせて行うこと
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なお、設立して間もない企業が申請できるとは言っても、「審査項目・加点項目」としては、「(3)再構築点②既存事業における売上の減少が著しいなど、新型コロナウイルスや足許の原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響で深刻な被害が生じており、事業再構築を行う必要性や緊要性が高いか。」などの適用を受けるため、採択されるか否かという観点においては、設立して間もなく、コロナ禍の影響が大きくないと判断されやすい(≒採択審査上はマイナス要素になる)ことについても留意しましょう。
グリーン成長枠のメリット②従業員数に関わらず、補助額最大1.5億円!
仮に「従業員数101人以上」であれば、「大規模賃金引上枠」という申請類型があり、中小企業者等であっても、「補助率2/3(6000万円超は1/2)」で、補助金額最大1億円が設けられております。しかし「従業員数101人以上」を、さらに「年率平均1.5%以上(初年度は1.0%以上)」増員させることが求められており、多くの中小企業にとってはハードルが高いものであり、実際に申請件数は少数しかありません。
一方、事業再構築補助金第6回公募から新たに追加された「グリーン成長枠」においては、中小企業者等であっても中堅企業等であっても、「従業員数の制限がない」ため、(極端な例として)従業員数が10名程度であっても、補助金額最大1.5億円の交付を受けることが可能です。
なお、「審査項目」において、「(2)事業化点①本事業の目的に沿った事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。また、金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか。」とあるため、従業員数が少なすぎたり、財務状況があまりよろしくない場合は、採択されるか否かという観点においては、審査上はマイナス評価となることには留意しましょう。
グリーン成長枠のメリット③既に採択されていても「2回目の申請」が可能
『既に過去の公募回で採択(※採択された事業を辞退した場合を除く。第7回公募においてグリーン成長枠を含む二つの事業類型に申請することはできません。)又は交付決定を受けている場合』においても、以下の2つの要件を満たすことで、「再申請」が可能となります。以下の2つの要件を満たすことは、決して容易とは言えないものの、既に第1回~第5回以前で採択され、交付決定を受けて事業実施期間中であっても、「グリーン成長枠」であれば「再申請が可能」となります。前述の通り、「売上高等減少要件」もないわけですので、もはやこの「グリーン成長枠」は「事業再構築補助金とは別物の補助金制度」のように考えることもできるでしょう。
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【別事業要件】
⑤既に事業再構築補助金で取り組んでいる又は取り組む予定の補助事業とは異なる事業内容であること
【能力評価要件】
⑥既存の事業再構築を行いながら新たに取り組む事業再構築を行うだけの体制や資金力があること
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なお、「グリーン成長枠」は、「審査項目」も「必要書類」も他の申請類型とはやや異なるため、「再申請」される方は十分に注意するようにしましょう。
グリーン成長枠のメリット④補助事業実施期間が「14か月」と長めに設定
他の申請類型が「交付決定日~12か月以内(ただし、採択発表日から14か月後の日まで)」を補助事業実施期間と定めているのに対し、「グリーン成長枠」においては、「交付決定日~14か月以内(ただし、採択発表日から16か月後の日まで)」とされています。他の類型に比べて大掛かりな設備投資が想定されており、昨今の半導体不足等で産業用機械の納期が長くなっていることなどに配慮されたのだと推測しています。
なお、第7回申請においては「事前着手承認制度」が未だ残っているため、事前着手の承認を得ることで、令和3年12月20日以降に購入契約(発注)等を行った事業に要する経費も補助対象経費とすることが可能となります。この「事前着手申請」は、第7回公募の場合は「令和4年7月1日~交付決定日まで」が受付期間となっていますので、ご注意下さい。
グリーン成長枠のメリット⑤「不採択」でも「通常枠で再審査」される!
原則は、1つの類型に申請し、1度の審査がなされます。しかし、いくつかの特殊な申請類型では、「(その特殊な申請類型で)不採択になっても通常枠で再審査される」こととなっており、「グリーン成長枠」においても、最初から「通常枠」に申請する場合よりも採択されやすい仕組みとなっております。ただし、再審査を受けることを希望する場合においては、最初の申請時に、「売上高等減少要件を満たすことを示す書類」を提出することが必須となりますので、ご注意ください。具体的な必要書類は、以下の通りです(事業再構築補助金第7回公募要領別添1)。
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事業再構築補助金「グリーン成長枠」のデメリット(悪いところ)
グリーン成長枠のデメリット①研究開発・技術開発又は人材育成が「必須」
前述の通り、「グリーン成長枠」に特徴的な要件として「グリーン成長要件」を満たす必要があります。これらを満たすことを立証する書類として、「研究開発・技術開発計画書」又は「人材育成計画書」の提出をしなくてはなりません。この所定様式については、「事業再構築補助金ホームページ(電子申請用資料)」からダウンロードが可能であり、本ブログ執筆現在のデータですが、参考として以下にアップロードいたします(※変更されている可能性があるため、実際の申請には使用しないでください)。
このように、「通常枠」とは異なり、「事業計画書以外にも書類作成が必要」という点において、申請ハードルがやや高くなっている点が、グリーン成長枠で申請するデメリットの1つと言えるでしょう。
グリーン成長枠のデメリット②「補助率」は1/2(中小企業者等)と低い
前述の通り、事業再構築補助金「グリーン成長枠」の補助金額が最大で1億円(中堅企業等は1.5億円)は1億円と他の申請類型と比べて多額になっている一方、補助率は「1/2(中小企業者等)」に引き下げられています(中堅企業等では1/3)。事業再構築補助金「通常枠」の補助率は、「中小企業者等2/3(6000万円超は1/2)」と定められているところ、「自己負担額」が大きいのがデメリットの1つでしょう。
例えば、中小企業者等の従業員数が「51名」だと仮定した場合において、投資金額が税別9000万円だった場合で試算してみますと、以下の通りとなります。
(1)通常枠で申請する場合
税別9000万円 × 補助率2/3 = 6000万円
(2)グリーン成長枠で申請する場合
税別9000万円 × 補助率1/2 = 4500万円
このように、同じ投資計画にも関わらず、「1500万円」もの補助金の差が生じる場合があります。どの類型で申請するか(グリーン成長枠を使うべきか否か)については、「認定経営革新等支援機関(株式会社エベレストコンサルティング)」とよく相談して、間違いのないように申請するようにしましょう。
グリーン成長枠のデメリット③目標値が通常枠等より高い(年率平均5%)
【付加価値額要件】
③補助事業終了後 3~5 年で付加価値額の年率平均 5.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均 5.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること
上記の通り、他の申請類型が「年率平均3.0%以上」とされているのと異なり、より高い成長率である「年率平均5.0%以上」が求められている点に注意が必要です。「付加価値額」は「営業利益+減価償却費+人件費」の合計とされているため、仮に営業利益の伸びがそこまで大きくなくても、従業員数が増えるような計画であれば、「年率平均5.0%以上」の伸び率はさほど難しいものではありません。しかし、これはあくまで「下限」に過ぎないため、「採択される」ためには、もっと高い成長率を掲げ、かつそれが客観的に合理的な計画になっている必要があります。認定経営革新等支援機関(株式会社エベレストコンサルティング)と一緒に、合理的かつ説得力のある事業計画を策定するようにしましょう。
「グリーン成長枠」に限らず、「事業計画書」の「質」がとても重要!
「グリーン成長枠」においても、「審査項目」は「通常枠」とほぼ同じ!
事業再構築補助金「通常枠」などと同様、「審査項目」として以下の4つ(グリーン成長枠だけ5つ)の審査項目が公募要領にて明確に公開されています(※詳細は公募要領38ページにてご確認ください)。
(1)補助対象事業としての適格性
(2)事業化点①~④
(3)再構築点①~⑤
(4)政策点①~⑥
((5)グリーン成長点①~④ ※グリーン成長枠に限る )
これらの審査項目に基づいて有識者(※例えば中小企業診断士協会に所属する中小企業診断士等)が客観的な審査を行います。こういった「審査項目」が公募要領にてきちんと設けられている場合、いくら素晴らしい事業計画書になっていたとしても、「審査項目」に該当する記載が網羅されていない場合は、高い評価を得ることが出来ず、採択に至ることが出来ません。つまり、「審査項目を想定した的確な事業計画書を作成する」ことが採択に向けた一歩となります。
この点、当法人が作成した「事業計画書の雛型(Word版)」を有償公開しています。以下のサイトから、実際に「Wordデータ」を入手頂けますので、ぜひ活用をご検討くださいませ(※当該Wordデータは汎用性が高いものであり、幅広い事業者様にご活用いただくため、「通常枠」を前提として作成しています。「グリーン成長枠」で活用する場合は、「グリーン成長戦略の実行計画14分野に掲げられた課題の解決に資する内容であること」について明確に追記することが必要となりますので、ご留意ください)。
「グリーン成長枠」特有の審査項目「(5)グリーン成長点」に注意せよ!
事業再構築補助金「グリーン成長枠」においては、以下の「グリーン成長点」が審査項目として追加されています。それぞれ所定の様式で提出する計画書が当該項目の審査対象の1つになると考えられますが、他の申請類型にはない特徴的な項目であり、主として提出する「事業計画書」においても、これらの項目を意識して事業計画書を作成するようにしましょう。