2名以上の外国人が共同で事業を経営する場合の取扱い(H24法務省公表)
平成24年法務省発表(平成27年3月改訂)により、下記の通り2名以上の外国人が共同で事業を経営する場合の取扱いについて、審査基準が明確化されていますので、ご紹介します。以下、法務省HPより抜粋。
外国人が我が国において,事業を起こし,その経営又は管理に従事する場合については,該当する在留資格として,「経営・管理」の在留資格が考えられますが,この場合,前提として,当該外国人が事業の経営又は管理に実質的に参画していること,すなわち,事業の運営に関する重要事項の決定,事業の執行若しくは監査の業務に従事する活動を行っていることが必要となります。
共同で事業を起こした複数の外国人がそれぞれ役員に就任するような場合には,それぞれの外国人が従事しようとする具体的な活動の内容から,その在留資格該当性及び上陸基準適合性を審査することとなります。
こうした在留資格「経営・管理」に係る運用の明確化の観点から,2名以上の外国人が共同で起業し,他に従業員がいない状況で,それぞれ役員に就任しようとする場合において,これら外国人全員に在留資格「経営・管理」が認められる事案の基本的な考え方と該当する事例について,次のとおり公表します。
【基本的な考え方】
「経営・管理」の在留資格に該当する活動は,先に述べたとおり,事業の経営又は管理に実質的に参画する者としての活動ですので,役員に就任しているということだけでは,当該在留資格に該当するものとはいえません。
また,複数の外国人が事業の経営又は管理に従事するという場合,それぞれの外国人の活動が「経営・管理」の在留資格に該当するといえるためには,当該事業の規模,業務量,売上等の状況を勘案し,事業の経営又は管理を複数の外国人が行う合理的な理由があるものと認められる必要があります。
実際には,従事することとなる具体的な業務の内容,役員として支払われることとされる報酬額等を勘案し,これらの外国人の行う活動が事業の経営又は管理に当たるものであるか否かを判断することとなります。
上記の考え方を更に具体化すると,
(1)事業の規模や業務量等の状況を勘案して,それぞれの外国人が事業の経営又は管理を行うことについて合理的な理由が認められること,
(2)事業の経営又は管理に係る業務について,それぞれの外国人ごとに従事することとなる業務の内容が明確になっていること,
(3)それぞれの外国人が経営又は管理に係る業務の対価として相当の報酬額の支払いを受けることとなっていること等
の条件が満たされている場合には,それぞれの外国人全員について,「経営・管理」の在留資格に該当するとの判断が可能といえます。
【具体例1】
外国人A及びBがそれぞれ500万円出資して,本邦において輸入雑貨業を営む資本金1000万円のX社を設立したところ,Aは,通関手続をはじめ輸出入業務等海外取引の専門家であり,Bは,輸入した物品の品質・在庫管理及び経理の専門家である。Aは,海外取引業務の面から,Bは,輸入品の管理及び経理面から,それぞれにX社の業務状況を判断し,経営方針については,共同経営者として合議で決定することとしている。A及びBの報酬は,事業収益からそれぞれの出資額に応じた割合で支払われることとなっている。
【具体例2】
外国人C及びDがそれぞれ600万円及び800万円を出資して,本邦において運送サービス業を営む資本金1400万円のY社を共同で設立したところ,運送サービスを実施する担当地域を設定した上で,C及びDがそれぞれの地域を担当し,それぞれが自らの担当する地域について,事業の運営を行っている。Y社全体としての経営方針は,C及びDが合議で決定することとし,C及びDの報酬は,事業収益からそれぞれの出資額に応じた割合で支払われることとなっている。
上記法務省発表の通り、
(1)事業の規模や業務量等の状況を勘案して,それぞれの外国人が事業の経営又は管理を行うことについて合理的な理由が認められること
(2)事業の経営又は管理に係る業務について,それぞれの外国人ごとに従事することとなる業務の内容が明確になっていること
(3)それぞれの外国人が経営又は管理に係る業務の対価として相当の報酬額の支払いを受けることとなっていること
等の条件が満たされている場合においては、複数の外国の方へ在留資格「経営・管理」が許可される余地があります。しかしながら、これら(1)~(3)を適確に説明するには事業内容等に関する客観的資料はもちろん、しっかりとした申請理由書(※業務内容について明確に分担を決めたことがわかる「業務分担表」を作成して提出すると、入国管理局にも理解頂けやすくなります)の記載が必要となります。なお、(3)の対価については、金額指定があるわけではございませんが、1人当たり最低月額18万円以上の役員報酬は確保するべきでしょう。
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(執筆:申請取次行政書士 野村篤司)