建設業界の人手不足は極めて深刻 ~外国人雇用が一つの解決策~
新しい在留資格「特定技能(1号・2号)」の誕生!
建設業界は2020年現在、330万人近くいるとされる建設技能者のうち、83万人以上が60歳以上とされ、近い将来に「高齢熟練技能労働者の大量退職」が迫っており、「人手不足」と言われる業界の代表格です。このような状況に対応して、入国管理・難民認定法が改正され、2019年4月より「特定技能(1号・2号)」制度がスタートしました。これまでは「外国人技能実習制度」が人手不足を補う形で現実問題として機能していましたが、この制度は「技能を日本で習得させて、本国で活かしてもらい、もって国際貢献すること」が主目的であり、正面から人手不足を受け入れる制度ではないことから、真正面から即戦力人材を雇用できる特定技能制度は、業界にとって待望の制度と言えるのではないでしょうか。
(※技能実習制度と特定技能制度の違い・比較については、こちらのブログ記事へ)
【建設分野】特定技能1号・2号制度は、とても難解で、かつ高コスト!
業界にとって待望の制度であったことは間違いないでしょうが、いざ制度の詳細を見てみて驚いた方が多いのではないでしょうか?
この「特定技能制度」の詳細をご覧になられた方の多くの反応はおそらく、
「さっぱりわからん・・・制度が難し過ぎて理解不能!」
「大手企業以外の活用は無理(高コスト過ぎて割に合わん)!」
のいずれかになるのではないでしょうか。この点は、行政書士法人エベレストが運営する「特定技能シェルパ」にてブログ記事を書こうと考えています。本記事では、「特定技能1号」では雇用できそうにないけど、どうしても日本人雇用は難しい!ほかに外国人を雇用できる方法はないか、というご相談にお答えしたいと思います。
「建設業界」で雇用できる外国人の在留資格は特定技能以外にもある!
①「技術(・人文知識・国際業務)」→いわゆる「建設系エンジニア」!
まず就労系在留資格の代表的な「技術(・人文知識・国際業務)」です。いわゆる「建設系エンジニア」と呼ばれる人たちです。具体的には、「建築CADオペレーター」や「構造計算等の技術者(設計者)」が代表的です。原則として、「大学卒業以上」という学歴要件と、その履修内容との関連性が求められます。海外の大学卒業でも構いませんが、従事する業務については、学んだ内容が活かされていないといけません。現場(単純)労働はできないため、「現場の労働力が欲しい!」という企業にとってはあまり関係ないでしょう。
②「(技術・)人文知識(・国際業務)」→いわゆる総務・営業系職種!
これは建設業界に限った話ではありませんが、「建設業者」様においても、工事の受注・発注を管理したり、建設作業員の人事労務を行ったり、総務・経理業務や営業活動が必要となります。そのような営業・事務系部門での採用については、「人文知識」というカテゴリなら採用の検討が可能です。但し、こちらも①と同じく、原則として「大学卒業以上」という学歴要件や職務内容との関連性が必要になります。また、単純作業や現場労働は不可能ですので、やはり「現場の労働力が欲しい!」という企業にとってはあまり関係ないでしょう。
③「技能」(建築技術者:上陸基準省令第2号)→外国に特有の建築方法!
新しい在留資格「特定技能」と紛らわしいのですが、「技能」という在留資格があります。その多くは中華料理店のコックさん(調理師)をイメージしていただくとよいかなと思いますが、実は「外国に特有の建築又は土木に係る技能」(ゴシック建築、ロマネスク、バロック方式、中国式等)を用いる建築技術者であれば、当該「技能」の在留資格で雇入れが可能です。但し、当該技能に関する実務経験が原則10年以上必要だったり、日本人技能者でも作業が容易であるような工程には従事できないなど、活用の例は多くありません。
④技能実習(1号・2号・3号) →いわゆる「実習生」!
とにかく「現場の労働力が欲しい!」という企業にとっては、技能実習計画に沿っていれば、「現場(単純)労働」についても「OJT」のもと従事が可能な「技能実習制度」の活用がよいかもしれません。この「技能実習制度」については、以下のサイトが参考になります。下の画像でも概要が掴めるかもしれませんが、「監理団体」や「送り出し機関」といった組織が登場するので、ややこしく感じる方が多いでしょう。あくまで「国際貢献」であり、「実習させる」ことが目的ですので、真正面から「労働力」として受け入れる制度ではない点は注意が必要です。また、「業種及び作業」が限定されている点も要注意です。
なお、以下の資料(公益財団法人国際研修協力機構:JITCO)がわかりやすいのでお勧めです。ダウンロードのうえ、ご参照ください。
⑤特定活動(外国人建設就労者受入事業) →緊急かつ時限的措置!
→これは、復興事業のさらなる加速を図りつつ、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会等の関連施設整備等による一時的な建設需要の増大に対応するために、緊急かつ時限的措置で認められた制度で、平成27年(2015年)4月から受け入れがスタートした在留資格です。対象者は④で説明した「技能実習生」の修了者となります。通常の「監理団体」ではなく、「特定監理団体」として国土交通省に認定された事業協同組合等の協力を必要とする点でも、なかなか活用のハードルは高いでしょう。詳細は、以下の資料が参考になりますので、ダウンロードのうえご覧ください。当該在留資格は、「令和3年3月31日」までに認定を受けた適正監理計画に基づき就労を開始している外国人建設就労者については、外国人建設就労者の受入期間の範囲で最長で令和5年3月31日まで実施することができます。時限措置につき、その後は、⑥特定技能制度へ一本化されることが決まっています。
⑥特定技能1号 →2019年4月~認められた待望の在留資格!
6つ目は、2019年4月から認められた「特定技能」です。技能実習制度より少ない「11職種」(※型枠施工・鉄筋施工・屋根ふき・左官・内装仕上げ・コンクリート圧送・建設機械施工・トンネル推進工・土工・電気通信・鉄筋継手)しか認められていません(※本記事執筆現在)が、付随する限りは日本人が通常行うこととなる業務に就いても従事することが可能であることから、「現場の労働力が欲しい!」という建設業者にとってはうってつけの在留資格となります(※但し、受け入れコストがかなり高いのが難点)。
特定技能1号は「最長5年間」ですが、その間に「技能検定1級」合格レベルの技能水準に達し、かつ班長経験等を数年経験すれば、「特定技能2号」へと昇格することができ、家族を呼ぶことなどが可能となります(※在留期間の更新制限もありません)。
なお、こちらの制度理解には、以下のファイルをご一読することが最短ルートです。ダウンロードのうえ、ご一読ください。
⑦身分系在留資格(日本人の配偶者等・定住者・永住者・永住者配偶者等)
7つ目は、就労制限のない「身分系在留資格」と言われる「日本の配偶者等」「定住者」「永住者」「永住者の配偶者等」です。就労制限がないため、現場労働であっても従事することが出来ます。身分に基づいた活動(配偶者であれば、実質的に婚姻関係が継続していること)を前提としている限りは、期限の制限もなく、従事が可能です。これらの外国人材は、他業界から(特に現場労働者が欲しい製造業界)も引っ張りだこであるため、身分系在留資格者の獲得は日本人と同等レベルで難しいと感じるでしょう。
⑧資格外活動(原則週28時間以内:家族滞在・留学)
最後は、「資格外活動許可」を得て、(原則)週28時間以内で働く留学生アルバイトなどです。コンビニや飲食店で働く若い外国人材は、ほとんどがこの「資格外活動」に該当します。時間制限があるものの、単純労働でも従事することが可能であることから、人材市場では重宝されています。建設分野でも、時間だけしっかりと注意すれば活用の余地は十分にあるでしょう。
建設分野で従事が可能な在留資格について徹底比較!
上記①~⑥についての違いがわかるように、比較表を準備中です。本ブログの更新をお待ちくださいませ。また建設分野での外国人材を雇用したい!という方は、行政書士法人エベレストまでお気軽にご相談ください。