帰化申請とは?7つの条件・手続きの流れ・許可されにくい事例を解説
帰化許可申請(以下、単に「帰化申請」と表記します。)とは、外国籍の方が自分の国籍を手放し、日本国籍を取得(=帰化)するために、法務省に申請することを指します。
「帰化申請は外国人なら誰でもできるものなの?」
「帰化申請をすると何がどう変わるんだろう?」
「帰化申請をするにはどんな手続きが必要?」
今この記事をご覧の方は、帰化申請についてさまざまな疑問でいっぱいのことでしょう。
結論から申し上げると、帰化申請をして日本国籍を取得するためには、以下7つの帰化条件をすべて満たしている必要があります。
7つの帰化条件 |
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条件1 |
【住所条件】日本に5年以上住んでいるか |
条件2 |
【能力条件】18歳以上かつ本国の年齢でも成人に達しているか |
条件3 |
【素行条件】素行が善良であるか |
条件4 |
【生計条件】日本で生計を立てられるか |
条件5 |
【重国籍防止条件】無国籍か、もしくは元の国籍喪失を了承できるか |
条件6 |
【思想条件】憲法を守って生活できるか |
条件7 |
【日本語能力条件】日常生活に支障のない日本語能力(読み書き)を備えているか |
ただし、申請者がこれらの条件をすべて満たしているように思えても、実はご本人の経歴や職歴、家族関係などによって、帰化条件は細かく異なり、その分提出書類の種類も変わってきます。
実際に、2020年に帰化申請をした外国籍の方のうち、10人に1人の割合で不許可になっていることから見ても、帰化申請は慎重に準備を行っていく必要があります。
そこで今回この記事では、下記の通り、「帰化申請」するための7つの条件や手続きの流れ、申請が受理されないケースとしてはどのようなものがあるのかなど、詳しい内容を見ていくことにします。
本記事でわかること |
①帰化申請をする際の7つの条件
②帰化申請の手続きの流れ
③不受理になりやすい事例 など
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この記事をお読みいただければ、「帰化申請」の大まかな内容を押さえることができ、ご自身が申請した場合はどのような点が不足しているのか、どのような流れで申請を進めていけばいいのか等について、くわしくイメージすることができるでしょう。
ぜひ最後までお読みいただき、「帰化申請」をスムーズに完結させるための参考にしていただければ幸いです。
1.帰化申請とは
それではさっそく、「帰化申請」とは一体どういうものなのか、詳しく見ていきましょう。
この章では、帰化申請の意味、日本国籍を取得するまでのおおよその目安、さらに帰化申請することのメリット・デメリットについて触れていくことにします。
1-1.「帰化申請」とは外国籍を持つ人が日本国籍の取得申請をすること
冒頭でもお伝えしたとおり、帰化申請とは外国籍を持つ方が、現在の国籍を手放して日本国籍を取得できるよう(=帰化)、法務省に願い出ることを指します。
下図をご覧いただくとわかるように、2016年から2020年の5年実績で見ると、日本では毎年8,500人~10,500人ほどが「帰化許可申請」によって日本国籍を取得していることがわかります。
【帰化許可申請によって日本国籍を取得した人の数】 (単位:人)
2016年 |
2017年 |
2018年 |
2019年 |
2020年 |
9,544 |
10,315 |
9,074 |
8,453 |
9,079 |
法務省公表資料より作成(https://www.moj.go.jp/content/001342633.pdf)
日本では、帰化の許可を下すのは法務大臣の権限となっており(国籍法第4条)、帰化が許可された場合には、「官報(かんぽう)」に帰化した方の氏名・生年月日・住所が告示されます。この告示された日から、日本国籍を持つ方としての新しい生活が、スタートすることになります。
「官報(かんぽう)」とは? |
日本国から日刊で発行されているA4判の機関紙(きかんし)。1883年に創刊。国の法律や政令などの公布のほか、国や特殊法人のさまざまな報告を掲載する。インターネットでも無料で見ることができる。 |
プライバシーが気になる方には |
これだけプライバシーが重視される現代において、住所や氏名などが「官報(かんぽう)」という公の場に公表されることに、抵抗を感じる方も多いことでしょう。
こちらでお伝えできるのは、まず告示される氏名は帰化する前の「本名」であるということです。 帰化すると同時に、姓名を日本の名前に変更される方が多いなか、「本名」と変更後の名前が一致しなければ、本人を特定することはなかなか難しいでしょう。
また、帰化した際の住所が「官報(かんぽう)」に告示されるため、告示後に引っ越しをして住まいを変更することもできます。
いずれにしろ、帰化する際は個人情報が表に出ること、そしてプライバシーを守るためには、ご自分で引越しなどの対策を立てることが必要であることを理解しておきましょう。 |
1-2.法務局で申請してから短くても約8か月~1年ぐらい掛かる
帰化申請をして許可が下りるまでには、通常8か月~1年半ぐらい、長い事例だと2年近くかかると言われています。
結果が出る時期に幅があるのは、申請者それぞれの状況により、審査する時間が異なるからです。たとえば、永住ビザやその他在留資格を持っている方が帰化申請をした場合、多くは審査結果が出るまでに1年ぐらいかかります。
一方、特別永住者の資格を持っている方だと、8か月ほどで帰化の許可が下りる場合があります。
どちらにしても帰化申請をした場合は、申請者の学歴や職歴、これまでの経歴などを過去にさかのぼって様々な面を調査します。そのため申請したその日のうちに許可が下りるということは決してなく、1年~1年半近い時間がかかることを頭に入れておきましょう。
1-3.帰化申請のメリット
帰化申請をして許可が下りるまでに長い時間がかかりますが、無事帰化を受理されれば、以下のようなメリットを享受でできます。
帰化申請することで得られるメリットを、以下に挙げてみましょう。
帰化申請のメリット |
①日本の政治に参加できる →外国籍の方は日本の政治に参加することができず、選挙の際も投票権を持てません。しかし、帰化することで日本の政治に参加する権利が与えられます。
②公務員など日本国籍保持者しかなれない職業につける →公務員などに応募する場合は、日本国籍を持っていることが第一条件です。そのため外国籍の方は、応募対象から外れ、公務員を目指すことができません。
③就職・引っ越しなどで差別を受けない →会社への就職や引越しなどの場合、「外国籍だから」という理由で断られてしまうことがあります。 その会社で活躍できる十分な能力を持っていたり、その物件に住める十分な収入を得ていたとしても、国籍が理由で拒否されるケースも、あちこちで見受けられます。 その点、初めから日本国籍を持っていれば、拒絶される心配はないと言えるでしょう。
④銀行やローン会社の融資を受ける際有利になる →日本国籍を保持していないことで、ローンや融資審査が日本の方以上に厳しくなる傾向があります。 日本国籍であれば、外国籍に比べて、銀行や融資会社からの信頼を得やすい面もあります。
⑤日本のパスポートを持つことで海外渡航に自由度が増す →自国のパスポートでは渡航先が制限されていても、日本国籍を取得することで自由に行ける国が増えることがあります。
⑥在留手続の更新手続きがいらなくなる →日本に滞在する外国籍の方は、定期的に在留手続の更新が必要です。また法務省から発行された「在留カード」を常に携帯する義務があります。しかし、日本国籍を持っていれば、これらの手間が省けます。
⑦強制送還されない →日本国籍を取得することで、本国へ強制送還される恐れがなくなります。
⑧社会保障面で日本人と同じ権利を持つことができる →年金・保険・教育・福祉などで日本の方と同等の権利を行使することができます。
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上記をご覧いただくとわかるように、帰化によって日本国籍を取得することで、多くのメリットが生まれることがわかりました。
しかしメリットの一方で、自国の国籍を喪失することのデメリットももちろんあります。
どのようなトラブルが生じるのか、次項でくわしく見ていきましょう。
2-4.帰化申請のデメリット
帰化申請のデメリットとしては、下記の内容が挙げられます。
帰化申請のデメリット |
①帰化申請の手続きをプロに依頼すると費用がかかる →帰化申請をするにあたって、手続きの煩雑さから逃れるために多くの方が行政書士など法律のプロに依頼しています。 こうした専門家に帰化申請の作業を依頼すると、1人当たりにかかる「帰化申請」サポート料は、目安として20~25万円ぐらいとなります。
たとえば家族5人が申請作業を依頼するとなると、膨大な金額を費やさなければなりません。
②母国の国籍を喪失する →帰化によって日本国籍を取得することで、これまで大切に保持してきた、母国の国籍を失うことになります。先祖代々守ってきた母国へのルーツが、書類上断たれてしまうことに抵抗がある方は、帰化申請をよく検討した方がいいでしょう。
また母国へ足を運ぶ際は、新たにビザ(査証)を取得しなければいけません(国によっては条件を満たせば無査証滞在ができる場合もある)。
もし親類縁者が母国へ残っている場合、頻繁に行き来したい際はビザ取得の手間や費用が負担になります。 |
2.帰化申請に必要な7つの帰化条件
帰化申請した場合のメリット・デメリットを理解したうえで、やはり「帰化申請を検討したい!」となった場合は、まず申請者本人が、以下7つの帰化条件を満たしている必要があります。
7つの帰化条件 |
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条件1 |
【住所条件】日本に5年以上住んでいるか |
条件2 |
【能力条件】18歳以上かつ本国の年齢でも成人に達しているか |
条件3 |
【素行条件】素行が善良であるか |
条件4 |
【生計条件】日本で生計を立てられるか |
条件5 |
【重国籍防止条件】無国籍か、もしくは元の国籍喪失を了承できるか |
条件6 |
【思想条件】憲法を守って生活できるか |
条件7 |
【日本語能力条件】日常生活に支障のない日本語能力(読み書き)を備えているか |
一体どのような条件なのか、1つずつ確認していきましょう。
2-1.【住所条件】日本に5年以上住んでいるか
まず1つ目の条件として、日本に引き続き5年以上住んでいるかどうかが問われます。
こちらは、国籍法第5条第1項第1号に基づいた条件になります。
「私は5年以上日本に住んでいる!よかった」と喜ぶのはまだ早いです。
なぜなら、この期間は正社員・契約社員・派遣社員として3年以上就労していることが条件となっているからです。
以下のような例外もあります! |
◎日本に10年以上居住している方に限り、下記の条件でOKとされる場合があります。
就労期間3年以上→就労期間1年以上
◎日本と特別な関係を持つ外国人(たとえば日本で生まれた者、日本人の配偶者、日本人の子、かつて日本人であった者等で、一定の者)については、上記の帰化の条件を一部緩和しています(国籍法第6条から第8条まで)。
【緩和条件1】 日本人だった者の子(養子を除く)で、引き続き3年以上日本に住所又は居所を有する場合。
【緩和条件2】 日本で生まれ、引き続き3年以上日本に住所又は居所を有しているもの。又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの。
【緩和条件3】 引き続き10年以上日本に居所を有するもの。
【緩和条件4】 日本人の配偶者で引き続き3年以上日本にいて、現在も日本に住んでいるもの。
【緩和条件5】 日本人の配偶者で婚姻の日から3年経過し、引き続き1年以上日本に住んでいるもの。
【緩和条件6】 日本人の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの。
【緩和条件7】 日本人の養子になり、引続き1年以上日本にいて、養子縁組の時、本国法により未成年であったもの。日本の国籍を失ったもの(日本に帰化した、後日本の国籍を失ったものを除く。)で日本に住所を有するもの。
【緩和条件8】 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き三年以上日本に住所を有するもの |
また、下記の条件に当てはまる方は要注意です。
・連続90日以上の日本出国 |
上記のような場合は、日本に在留した期間として「引き続き」と見なしてもらえない可能性があります。
そのため、日本出国した時点で在留期間は振出しに戻り、またゼロから数え始めなければなりません。但し、出国の理由やその時期などによっても、この判断は分かれますので、慎重に判断する必要があります(すぐに諦める必要はありません)。
2-2.【能力条件】18歳以上かつ本国の年齢でも成人に達しているか
申請者の年齢が20歳以上であることが条件となります。
さらに申請者の本国の法律で、成人年齢に達しているかどうかも問われます。
こちらは、国籍法第5条第1項第2号に基づいた条件になります。
なお未成年者が両親と共に帰化する場合は、条件を満たしていなくとも一緒に帰化の手続きを取ることができます。
令和4年より20歳→18歳へ! |
令和4年(2022年)4月1日から、年齢制限が下記のように変更になりました。
「20歳以上」→「18歳以上」 |
2-3.【素行条件】素行が善良であるか
素行が善良であることが必要です。素行が善良であるかどうかは,犯罪歴の有無や態様,納税状況や社会への迷惑の有無等を総合的に考慮して,通常人を基準として,社会通念によって判断されることとなります。
法務省より引用 |
素行に問題がないかどうかを判断する項目です。
こちらは、国籍法第5条第1項第3号に基づいた条件になります。
この項目で見られるのは、犯罪歴や納税状況、交通違反など社会に迷惑をかけていないかどうかなどです。総合的に状況を見て、社会通念に照らし合わせながら全体的に判断します。
具体事例については、「3.帰化申請が不可になりやすい事例」でご紹介しますので、あわせてご覧くださいね。
2-4.【生計条件】日本で生計を立てられるか
生活に困るようなことがなく,日本で暮らしていけることが必要です。この条件は生計を一つにする親族単位で判断されますので,申請者自身に収入がなくても,配偶者やその他の親族の資産又は技能によって安定した生活を送ることができれば,この条件を満たすこととなります。
法務省より引用 |
4つ目の帰化申請の条件として、万が一日本で生活することになった際、経済的に自立しきちんと安定した暮らしができるかどうかを判断されます。
こちらは、国籍法第5条第1項第4号に基づいた条件になります。
こちらは、申請者本人だけでなく、生計を一つにする親族なども考慮に入れるため、申請者本人に収入がなくても、別のご家族に収入や資産があったり、収入につながる技能で安定的に生活できることがわかれば大丈夫です。
ここで見られるのは、申請者本人や同居するご家族の世帯収入になります。経済的にきちんとバランスの取れた状況であることがポイントとなります。
具体事例については、「3.帰化申請が不可になりやすい事例」でご紹介しますので、あわせてご覧くださいね。
2-5.【重国籍防止条件】無国籍か、もしくは元の国籍喪失を了承できるか
帰化しようとする方は,無国籍であるか,原則として帰化によってそれまでの国籍を喪失することが必要です。なお,例外として,本人の意思によってその国の国籍を喪失することができない場合については,この条件を備えていなくても帰化が許可になる場合があります。
法務省より引用 |
二重国籍を防止するための条件です。
こちらは、国籍法第5条第1項第5号に基づいています。
帰化によって日本国籍を取得した際には、これまで保持していた本国の国籍を喪失することを条件としています。
以下のような例外もあります! |
外国籍の方が自分の意志で本国の国籍を失うことができない場合には、その方が日本国民との 親族関係または境遇につき、特別の事情があると認められる時は、上記条件を満たしていなく ても、帰化を許可される場合があります。
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2-6.【思想条件】憲法を守って生活できるか
帰化条件6つ目は、日本の政府を暴力で破壊することを計画したり、主張する者、またはそのような団体を結成したり、加入しているような者は帰化できないことを定めています。
たとえば、暴力団関係者や右翼関係者、テロリスト集団や反社会勢力関係者などが該当します。こちらは、国籍法第5条第1項第6号に基づいた条件になります。
2-7.【日本語能力条件】日常生活に支障のない日本語能力(読み・書き)を備えているか
通常、帰化する際に必要な条件として「国籍法」で定められているのは上記6つですが、法務省ではこの他にも、日本に生活基盤を置く上で毎日の暮らしに支障のないレベルの日本語能力(読み・書き)も求めています。
具体的な日本語レベルが気になるところですが、国としては日本国民の義務教育を終えたぐらいのレベル、つまり15歳程度の能力があれば望ましいと考えています。
しかし、多くの外国人にとって、15歳ぐらいの日本語能力というのは、なかなかハードルが高いものです。そのため、目安としては10歳程度の日本語能力を身に付けていることを1つの判断材料としているようです。
日本語能力が低いと、日本人として生活するのに力不足だと捕えられてしまい、帰化の許可が下りないケースもありますので、注意が必要です。
3.帰化申請が不可になりやすい事例
前述した7つの帰化条件だけを見て、すべての条件をクリアできていると胸をなでおろした方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、7つの条件はあくまでも基礎的なものであり、条件によってはさらに細かく制約を定めているものがありますので、注意が必要です。
こうした細かい点を1つずつ確認して解決しなければ、いつまでも帰化申請が受理されない恐れがあります。では一体どのようなポイントが受理不可の理由とされてしまうのか、実例を見ながら詳しくご紹介していきます。
3-1.【不許可になった事例①】「素行が善良であるか」という素行条件の場合
住民税について |
住民税をきちんと支払っていないと、帰化審査が却下される可能性があります。
現在サラリーマンとして、会社から毎月お給料をもらっている方は、住民税はあらかじめ給料から天引きされていますので心配無用です。しかし、そうでない場合は、自分で住民税を支払わければなりません。結婚している方は配偶者の住民税も、きちんと支払っているか確認してください。
会社経営者・個人事業主について |
会社経営者や個人事業主の方は、法人税や個人事業税などの税金をきちんと支払っていないと、帰化申請の審査がスムーズに通らなくなる恐れがあります。
年金について |
サラリーマンの方は「厚生年金」を、それ以外の方は「国民年金」を毎月きちんと収める必要があります、こうした年金関連の支払いを、おろそかにしていないかどうかも、審査基準の対象となります。
サラリーマンの方であれば、会社が自動的に「厚生年金」として、給与から控除している場合がほとんどですが、そうでない「国民年金」の場合は、うっかり払い忘れているかもしれません。
その場合は、今からでも直近1年間分を支払い、それに対する領収証を提出すれば、帰化要件を満たすと判断される場合があります。
また会社経営者の方は、経営する会社が厚生年金保険に加入し、保険料を支払っているかどうかが重要です。その際、代表者である会社経営者の方も厚生年金保険に加入し、自らも保険料を払っていることが帰化条件の1つとなります。
交通違反について |
現時点から過去5年分さかのぼった、交通違反の経歴を調査されます。
比較的軽度の違反(駐車違反・シートベルト未着用など)であれば、5回程度までなら帰化申請に影響を与えることはないでしょう。
しかし、走行中のスピード違反や飲酒運転などをしてしまった場合は、審査時に大きなマイナスとなります。特に飲酒運転となると、帰化不許可になるケースが多いので注意が必要です。ただ、同じ飲酒運転でも違反のあった時期から長期間経過している場合は、不許可まで至らないケースもあるかもしれません。いずれにしろ、交通違反をしてしまったかどうかは、帰化審査の進退を左右する大きな原因になります。
前科・犯罪歴について |
前科・犯罪歴のある方は、審査がスムーズに進まない恐れがあります。
ただし、前科・犯罪歴と一言で言っても、軽度のものから重度の物までその内容や程度は千差万別です。そのため、どのようなケースが審査ではねられてしまうのか確実なことは言えませんが、トラブル発生時からそこそこの年数が経っているのであれば、帰化審査が許可される可能性もあります。
3-2.【不許可になった事例②】「日本で生計を立てられるか」という生計条件の場合
仕事について |
現在就職して、毎月安定した収入があるかどうかは重要なポイントなります。
失業している方は収入の見込みが薄いため、この「生計条件」を満たしていないことになります。
そういった方は少しでも帰化審査が通るように、まずは就職をすることが先決です。
給料の目安額ですが、1か月あたり「手取り18万円以上」が得られれば、生計の要件を満たしていると判断されるでしょう。
ただし、この「生計条件」は、申請者本人に収入がなくても、別のご家族に収入や資産があったり、収入につながる技能で安定的に生活できることがわかれば大丈夫です。
自己破産について |
自己破産した経験があるかどうかも、帰化審査の妨げになります。
ただし、自己破産したことがあっても、破産手続き開始決定日から7年以上過ぎていれば、この点としては大丈夫です。7年未満であるならば、不許可となり得ます。
借金について |
借金のある方は、帰化条件に引っかかる可能性がありますので、注意が必要です。
ただし借金をしていたとしても、滞納があったり、返済が遅れたりしていなければ大丈夫です。住宅ローンやマイカーローンについては、特段影響はしないでしょう(資産として不動産や車両の計上が考えられるため)。しかしここでさらに重視されるのは、借金の返済額と安定して得られる収入額とのバランスです。借り入れの返済に追われているような場合(極端に収支バランスが崩れている場合)は、許可審査がスムーズに進まないかもしれません。
国民年金の免除申請・納付猶予申請について |
国民年金の支払い免除や納付猶予を申請している方は、帰化申請が不許可になる可能性があります。
なぜなら、この制度を利用しているということは、日本に住む全国民が払うべき義務をまっとうできないということになり、生計条件のなかの国籍法第5条第1項4号『自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること』という点において、基準から外れてしまうからです。
そのため帰化申請をする際は、保険料免除や納付猶予の申請をしていないことが必須条件となります。
3-3.【不許可になった事例③】「憲法を守って生活できるか」という思想条件の場合
審査対象について |
審査対象は申請者本人だけにとどまらず、申請者の両親や兄弟の状況も、大いに参考にしていくので、注意が必要です。
また、会社経営者の場合は、ご自身だけではなく社内のメンバーや取引先なども、審査対象になる可能性があります。
「2-6.【思想条件】憲法を守って生活できるか」でも述べたとおり、日本政府に対して暴力や破壊行動を試みようとする者は、帰化申請の不許可があり得るとしました。「思想条件」に該当する例として、暴力団関係者や右翼関係者、テロリスト集団や反社会勢力関係者などがあります。
親族や社内のメンバー、取引先にこのような対象者が含まれているかどうかは、しっかり確認しておく必要があります。
4.帰化申請の手続きの流れ
帰化申請をするための7つの条件と、不許可になりやすい事例をご理解いただけたところで、実際に帰化申請をする際は、どのような手順で申請作業を進めていけばいいのかを見ていきましょう。
具体的なステップは、下記の通りです。
【STEP1】法務局へ「事前相談」します(1回目の訪問)
まずは「法務局」へ事前に電話をして、訪問の予約を取ります。
行政書士などに帰化申請の作業を依頼されている場合は、同席してもらいましょう。もちろん行政書士法人エベレストでも承ります(※愛知県・岐阜県・三重県以外のエリアについても応相談)。
この事前相談では、申請者の情報を法務局に伝えることで、帰化申請に必要な書類や手続きなどについて相談します。行政書士へ依頼した場合、必要な書類等を予め揃えることができるため、最初の事前相談の段階で、書類の受付まで行ってくれる場合もあります。例え「一発受理」がされない場合であっても、不備や不足書類が警備と判断され、事前相談終了後に、すぐに直近の予定で次の予約が取れる場合もあります。帰化申請を急ぎたいという方は、行政書士へ依頼するようにしましょう。
【STEP2】提出書類の作成と取り寄せを開始します
帰化申請に向けて、必要書類を揃えていきます。
申請者本人は、本国および日本国内から必要書類を取り寄せます。また、必要書類の取り寄せと並行して、「帰化の動機書」の作成をします。この書類は、字が書けないなどの特段の事情がない限り、帰化申請をする本人が自署(自筆)で作成することが求められます。なお、特別永住者の場合(簡易帰化)は、帰化の動機書は省略が可能とされています。
【STEP3】法務局へ書類を提出します(2回目の訪問)
必要書類をすべて集め終わったら、再度法務局・地方法務局に訪問予約をします。
そして、書類を持って法務局へ向かい、持参した書類を提出し、確認してもらいます。
法務局によっては、申請を受理後、「面接」を実施するところもあります。
【STEP4】法務局側で書類の点検および書類受付
帰化申請者が提出した書類に基づき、管轄の法務局側で提出書類の点検作業を行います。
不備がなければそのまま受理され、審査を開始します。もし何らかの不備があれば、補正の連絡が入ります。軽微であれば、不足書類を改めて持参することはなく、「郵送」又は「FAX」での提出で認めてくれる場合があります。
【STEP5】法務局にて審査開始
提出書類に不足・不備が解消されたら、法務局にていよいよ審査の始まりです。ここでの審査は、あくまで「書面審査」となり、法務局で帰化するかどうかを判断するわけではありません。約2ヶ月経ったら、「法務省」に審査内容が引き継がれます。
【STEP6】法務省へ送付(法務省での審査開始)
法務省にてさらに慎重な審査を行います。
このタイミングで、申請者のみならず全国の帰化申請書類が法務省に集まってくるのです。
【STEP7】法務大臣の決裁
法務大臣が帰化対象者を決定します(なお、現実的に「法務大臣」が直接個々の案件を見ているわけではありません。事務方が決裁ルールに従って、帰化対象者を決定します)。
【STEP8】官報で告示(帰化申請に許可が下りた場合)
日刊の「官報」にて、帰化の許可が下りた方々の「住所(居住地)」・「氏名(帰化前の本名)」・「生年月日」が掲載されます。具体的にどのように掲載されるかは、次のページからご確認下さい。 ⇒インターネット版官報(https://kanpou.npb.go.jp/)
【STEP9】帰化の身分証明書受領、帰化届提出
帰化の審査を通過した申請者は、法務局で身分証明書を受け取り、ご自分の住む市町村の戸籍課へ帰化届を提出します。
【STEP10】戸籍および住民票の作成
帰化後の新しい氏名で、「戸籍」が作成されます。日本人と結婚しているケースでは、日本人の配偶者と同じ戸籍が編成されます(夫婦で別の戸籍を編成することは出来ません)。
また、住民票の「国籍」が日本となり、「本籍地」が記載されます。
【STEP11】日本国パスポートの切替及び氏名変更などによる各種届出
日本国民としてのパスポートの作成をし、同時に不動産、銀行の名義変更など新しい氏名による各種届け出を行います。並行して、地方出入国管理局にこれまで携帯してきた「在留カード」を返納します。「特別永住者カード」の場合は、市区町村役場で返還が可能です。
なお、これまで有していた国籍の領事館にて、「国籍喪失届」及び「パスポートの返還」を忘れずに行いましょう。
5.自力で帰化申請が難しい2つの理由
帰化申請の作業はステップが多く、非常に煩雑なため、自力で申請するには大きな苦労が伴います。特に以下2つの理由があるため、帰化申請を自分一人で進めるのは難しいのです。
自力で帰化申請が難しい2つの理由 |
●書類が煩雑なので自力ですべての必要書類を揃えるのが難しい ●本国から来た書類が翻訳できない |
1つずつ具体的に見ていきましょう。
5-1.書類が煩雑なので自力ですべての必要書類を揃えるのが難しい
帰化申請で作成・取り寄せしなければならない書類は、とても大量です。しかも、帰化申請の制度は少しずつ改定されており、きちんとした法的知識がないと、必要書類を間違いなくそろえるのは難しいと言えるでしょう。
下記の表をご覧ください。
年 |
帰化許可申請者数(人) |
帰化不許可者数(人) |
不許可になった割合 |
2016 |
11,477 |
607 |
5.2% |
2017 |
11,063 |
625 |
5.6% |
2018 |
9,942 |
670 |
6.7% |
2019 |
10,457 |
596 |
5.6% |
2020 |
8,673 |
900 |
10.3% |
法務省のデータより作成
こちらは、帰化申請をしたにもかかわらず、不許可になってしまった人数を表しています。
特に直近の2020年のデータでは、およそ10人に1人の割合で不許可になっています。
こうした状況を見るにつけ、個人で書類をかき集め、法務省との面談をこなし、帰化受理までこぎつけるのは、予想以上にハードであることがわかります。
そのため、初めからプロ(行政書士)にお願いすることを検討するのもいいでしょう。
5-2.本国から来た書類が翻訳できない
帰化申請をする際は、本国から公的書類を取り寄せ、日本語に翻訳したものを添付して提出しなければならないこともあります。
しかし申請者によっては、本国に住んだことがなく、母国語の読み書きがまったくできない方もいらっしゃいます。
そんな方が、本国から来た書類を読んで理解し、日本語にきちんと翻訳して帰化申請にまで持っていくのは、至難の業です。
特に、本国から取り寄せる代表的な書類としては、親族関係を証明する「戸籍謄本」や「家族関係証明書」などがありますが、このような公式文書は法律用語が使用され、難易度が高い傾向にあります。
そのため、行政書士などの専門家のうち、当法人(行政書士法人エベレスト)のように翻訳まで請け負ってくれるところを探して、依頼することをおすすめします。
6.帰化申請を検討される方は行政書士法人エベレストへご相談ください
「自分が帰化条件にあてはまっているのかどうか相談したい」
「書類が煩雑なので自力ですべての必要書類を揃えるのが難しい」
「本国から来た書類が翻訳できない」
など、自力での帰化申請の準備や判断が難しい場合は、その道のプロである行政書士に依頼するのが近道の1つとなります。
行政書士に依頼するメリットとしては
●本国からの書類を日本語に翻訳してくれる
●必要書類の作成を支援してくれる
●日本国内および本国からの書類収集をサポート・アドバイスしてくれる
●法務局との面談に同行してくれる
などが挙げられます。
「そうはいっても、行政書士なんてどこで探せばいいのかわからない!」
「安心して依頼できる行政書士を、すぐに見つけるなんて難しい」
と迷っていらっしゃる方は、ぜひ「行政書士法人エベレスト」へご相談ください。
行政書士法人エベレストでは、以下5つの特徴をフル回転させながら、あなたの帰化申請がスムーズに受理されるよう動いていきます。
6-1.本国(韓国語)からの書類を日本語に翻訳する
韓国語及びベトナム語の2か国語に限り、ベトナム籍・韓国籍の専門家スタッフと協力して、取り寄せた書類の日本語への翻訳作業などを行っております。
特に、本国から送られてくる公式書類は、手書きで記載されていて解読すら難しい場合もあるため、通常の文章に比べて難しく感じることがあります。その点も心配なく、きちんと日本語に翻訳していきます。
※なお、ベトナム語及び韓国語の翻訳以外は、「翻訳専門会社」のご紹介が可能です。
6-2.帰化申請書類の作成支援をする
韓国からの書類の取り寄せや、帰化申請に必要な提出書類の作成をお手伝いいたします。行政書士法人エベレストでは、実務経験10年以上のベテラン行政書士、韓国籍の経験豊富な正社員が在籍しており、豊富な専門知識を武器に、帰化申請についての手厚いサポートが可能です。
6-3.帰化書類の収集をサポートする
必要書類を代わりに取得したり、どの書類を用意すればいいのかについて、申請者からの相談に応じます。書類の不足が1つでもあると、原則として帰化申請は受理されません。
できるだけスムーズに審査が通るよう、書類収集のお手伝いをいたします。
6-4.法務局との面談に同行する
前述の通り、帰化申請者は、法務局にて「面談が必要」になります。
1人での面談が不安な方に向けて、行政書士が同行いたします。
面談が複数回になる場合、原則として初回相談は無料にて同行いたします。
※「面接」では、行政書士の同行は待合室までとなります。書類点検時には、ほとんどの法務局にて同席が認められています。
6-5.日本全国からのご相談に対応
当社は名古屋駅近くに本社、大阪市北区に関連事務所(行政書士事務所エベレスト)を構えていますが、全国エリアのお客様を対象としております。
お電話もしくは専用のメールフォームにて、お気軽にご相談ください。
初回のご相談は無料となっています。
お電話でもメールでも、必ず「行政書士」が担当してご回答させていただきます。
7.まとめ
今回は、帰化申請について下記の内容をご紹介しました。
●帰化申請の7つの条件
●帰化申請の手続きの流れ
●申請不可になってしまう事例 など
特に、最初の「7つの帰化条件」については、帰化申請をするうえでもっとも重要な要素となりますが、それぞれの経歴や職歴、滞在資格などによって条件は異なってきますので、注意が必要です。
念のため「7つの帰化条件」について振り返ってみましょう。
7つの帰化条件 |
|
条件1 |
【住所条件】日本に5年以上住んでいるか |
条件2 |
【能力条件】18歳以上かつ本国の年齢でも成人に達しているか |
条件3 |
【素行条件】素行が善良であるか |
条件4 |
【生計条件】日本で生計を立てられるか |
条件5 |
【重国籍防止条件】無国籍か、もしくは元の国籍喪失を了承できるか |
条件6 |
【思想条件】憲法を守って生活できるか |
条件7 |
【日本語能力条件】日常生活に支障のない日本語能力(読み書き)を備えているか |
となります。
今回の記事では、上記の条件以外にもいくつかの例外や、帰化申請までの流れなどについても触れました。いずれにしろ、帰化申請をするにあたっては多種多様な書類を用意する、法務局へ足を運ぶなど多くの手間と時間を必要とします。
個人が自力ですべてをこなすのは、大変な労力が要りますので、できれば専門家の助言やサポートを受けけることをおすすめします。
本記事を読むことで、あなたの帰化申請に対しての不安を少しでも取り除くことができたら幸いです。