相続法(民法)が改正!いつから施行?どこで確認できる?
相続法(民法)改正の概要はどうやって確認できる?
相続法改正内容の概要については、下記法務省HPより確認できます。本記事後半に概要を記載いたしました。相続法改正内容をまとめたPDFも法務省HPから公開されていますので、下記に添付いたします。また、改正法の「新旧対照表」についても公開されていますので、ファイルを置いておきます(ご自由にダウンロードください:専門家向け)。
新旧対照表(民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について)
相続法改正はいつから施行?いつまでに施行されるの?
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行期日は,原則として,公布の日から1年以内に施行される(別途政令で指定します)こととされていますが,遺言書の方式緩和(前記3(1))については,平成31年1月13日から施行され,また,配偶者の居住の権利(前記1)については,公布の日から2年以内に施行される(別途政令で指定します)こととされています。
つまり、時系列にまとめますと、
(1)平成31年(2019年)1月13日~施行 … 遺言書の方式緩和関連
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(2)令和 元年(2019年)7月1日~施行 … 配偶者居住権以外の改正部分
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(3)令和 2年(2020年)4月1日~施行 … 配偶者居住権関連
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(4)令和 2年(2020年)7月10日~施行 … 遺言書保管法
となります。原則は1年以内の施行だけれども、影響の多い配偶者居住権関連は少し長めに周知期間を設定し、一方で、広く国民の利益となる遺言書の方式緩和については、早めに施行することとなっています。本記事執筆現在(2018年10月4日時点)では、具体的な日にちを設定する法務省令は発表されておりませんが、また判明次第、Twitter等で速報いたします。当社同様、相続手続きを支援する事業者としては、新法での適用を踏まえた相続対策・遺留分対策が望まれます。
→2018年12月3日時点で、発表されました。下記リンク先の法務省HPでも確認が可能です。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00237.html
【遺言書保管法については下記のブログ記事にまとめました(2019年10月14日執筆)】
⇒法務局における遺言書の保管等に関する法律について(別ブログ記事)
相続法改正ポイントは全部で6つ!(※保管制度創設含めて7つ!)
相続法改正ポイント(1)配偶者の居住権を保護するための方策
配偶者の居住権保護のための方策は,大別すると,遺産分割が終了するまでの間といった比較的短期間に限りこれを保護する方策(後記⑴)と,配偶者がある程度長期間その居住建物を使用することができるようにするための方策(後記⑵)とに分かれています。
⑴ 『配偶者短期居住権』の要点
ア 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合の規律
配偶者は,相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には,遺産分割によりその建物の帰属が確定するまでの間又は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間,引き続き無償でその建物を使用するこ とができる。
イ 遺贈などにより配偶者以外の第三者が居住建物の所有権を取得した場合や,配偶者が相続放棄をした場合などア以外の場合
配偶者は,相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には,居住建物の所有権を取得した者は,いつでも配偶者に対し配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができるが,配偶者はその申入れを受けた日から6か月を経過するまでの間,引き続き無償でその建物を使用することができる。
⑵ 『配偶者(長期)居住権』の要点
配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の所有建物を対象として,終身又は一定期間,配偶者にその使用又は収益を認めることを内容とする法定の権利を新設し,遺産分割における選択肢の一つとして,配偶者に配偶者居住権を取得させることができることとするほか,被相続人が遺贈等によって配偶者に配偶者居住権を取得させることができることにする。
相続法改正ポイント(2)遺産分割に関する見直し等
⑴ 配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定)
持戻し免除の意思表示の推定規定の要点は,以下のとおりです。
⇒婚姻期間が20年以上である夫婦の一方配偶者が,他方配偶者に対し,その居住用建物又はその敷地(居住用不動産)を遺贈又は贈与した場合については,民法第903条第3項の持戻しの免除の意思表示があったものと推定し,遺産分割においては,原則として当該居住用不動産の持戻し計算を不要とする(当該居住用不動産の価額を特別受益として扱わずに計算をすることができる)。
⑵ 仮払い制度等の創設・要件明確化
仮払い制度等の創設・要件明確化については,大別すると,家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策
(後記ア)と,家庭裁判所の判断を経ないで預貯金の払戻しを認める方策(後記イ)とに分かれます。 それぞれの方策の要点は,以下のとおりです。
ア 家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策
預貯金債権の仮分割の仮処分については,家事事件手続法第200条第2項の要件(事件の関係人の急迫の危険の防止の必要があること)を緩和することとし,家庭裁判所は,遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において,相続財産に属する債務の弁済,相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を行使する必要があると認めるときは,他の共同相続人の利益を害しない限り,申立てにより,遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部を仮に取得させることができることにする。
イ 家庭裁判所の判断を経ないで,預貯金の払戻しを認める方策
各共同相続人は,遺産に属する預貯金債権のうち,各口座ごとに以下の計算式で求められる額(ただし,同一の金融機関に対する権利行使は,法務省令で定める額を限度とする。)までについては,他の共同相続人の同意がなくても単独で払戻しをすることができる。
【計算式】
単独で払戻しをすることができる額
=(相続開始時の預貯金債権の額)×(3分の1)×(当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分)
⑶ 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲
遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲に関する規律の要点は,以下のとおりです。
ア 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても,共同相続人全員の同意により,当該処分された財産を遺産分割の対象に含めることができる。
イ 共同相続人の一人又は数人が遺産の分割前に遺産に属する財産の処分をした場合には,当該処分をした共同相続人については,アの同意を得ることを要しない。
相続法改正ポイント(3)遺言制度に関する見直し
⑴ 自筆証書遺言の方式緩和
全文の自書を要求している現行の自筆証書遺言の方式を緩和し,自筆証書遺言に添付する財産目録については、自書でなくてもよいものとする。ただし,財産目録の各頁に署名押印することを要する。
⑵ 遺言執行者の権限の明確化等
ア 遺言執行者の一般的な権限として,遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は相続人に対し直接にその効力を生ずることを明文化する。
イ 特定遺贈又は特定財産承継遺言(いわゆる相続させる旨の遺言のうち,遺産分割方法の指定として特定の財産の承継が定められたもの)がされた場合における遺言執行者の権限等を,明確化する。
相続法改正ポイント(4)遺留分制度に関する見直し
遺留分制度に関する見直しの要点は,以下のとおりです。
⑴ 遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生ずるとされている現行法の規律を見直し,遺留分に関する権利の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずることにする。
⑵ 遺留分権利者から金銭請求を受けた受遺者又は受贈者が,金銭を直ちには準備できない場合には,受遺者等は,裁判所に対し,金銭債務の全部又は一部の支払につき期限の許与を求めることができる。
相続法改正ポイント(5)相続の効力等に関する見直し
相続の効力等に関する見直しの要点は,以下のとおりです。
⇒特定財産承継遺言等により承継された財産については,登記等の対抗要件なくして第三者に対抗することができるとされている現行法の規律を見直し,法定相続分を超える部分の承継については,登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないことにする。実務上よくある「相続させる旨の遺言」についても、過去の判例と異なる改正になるようで注意が必要です。
相続法改正ポイント(6)相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
相続人以外の者の貢献を考慮するための方策の要点は,以下のとおりです。
⇒相続人以外の被相続人の親族が,無償で被相続人の療養看護等を行った場合には,一定の要件の下で,相続人に対して金銭請求をすることができるようにする。
相続法改正による遺産整理実務への影響は??
上記6つのポイントをご紹介させて頂きましたが、いずれも遺産整理実務上の影響が大きいものばかりです。特に下記の項目について注目しています。
①法定相続分を超える金額の「債権」の遺贈を受けた場合の対抗要件をしっかりと具備すること(新法第899条の2第2項)。不動産とは異なり「登記制度」が対抗要件具備方法ではないので、見落としがち。
②実務上は慣例だった「遺言執行(開始)通知」が義務化されたため、従前の目録交付義務と合わせて徹底する(新法第1007条)。
③具体的遺留分額の算定において、過去の裁判例からほぼ無制限だった相続人に対する生前贈与について、「10年」及び「婚姻・養子縁組・生計の資本として」限定が設けられたので注意する(新法第1044条第3項)。
④「遺留分減殺請求権」という条文はなくなり、「遺留分侵害額請求権」となり債権化しているので、まずは言葉を間違えないようにする。
⑤「特別寄与者」による家庭裁判所に対する協議に代わる処分請求権の行使期限は、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したときであるため、初回相談時に、特別寄与者の有無及び合意可能性についてチェックする(新法第1050条第2項但書)。
⑥居住建物の所有者は、配偶者(長期)居住権を取得した配偶者に対して、「配偶者居住権の設定の登記」を備えさせる義務を負う(新法第1031条第1条)ため、不履行にならないように注意する。
上記以外にも、法改正施行後の実務レベルでの取り扱い、サービス遂行での注意点は多岐に及びます。ご注意ください。
相続法改正など遺産整理に関するご相談は、行政書士法人エベレストへ
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