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公正証書遺言書|相続争いを確実に避ける手順と押さえるべき注意点

 

「公正証書で遺言を遺すには、どうしたらいいのだろう」

「公正証書の遺言書って、どうやって作るのだろう」

 

公正証書で遺言を遺すことは、遺言者の死後の相続トラブルを防ぐのにもっとも有効な方法です。

改ざんや廃棄の心配がなく、作成過程で遺言のプロである公証人の確認が入るため、遺言の記載内容に法的な誤りがないと考えられるため、確かな遺言書としての効力があるからです。

 

そのため、特に以下の方には、自筆証書ではなく、公正証書での遺言書の作成をおすすめします。

 

・法的に正しく効力を発揮する遺言書を作成したい方

・遺言通りに速やかに相続手続き(遺産の承継)を進めて欲しい方

・残された家族間で無駄な遺産相続争いをさせたくない方

 

そこでこの記事では、公正証書で遺言を遺したい方のため、その効力や作り方の手順、書類や費用などの必要なものについて分かりやすく解説します。

 

本記事のポイント

・公正証書遺言書の効力について知ることができる

・公正証書遺言書の作り方を知ることができる

・公正証書遺言書の作成に必要なものを知ることができる

・公正証書遺言書の作成時の注意点を理解する

・公正証書遺言書の費用を知ることができる

 

この記事を読むことで、公正証書での遺言書の作成について理解し、あなたの死後、大切な家族を相続争いに巻き込まないようにする正しい公正証書遺言書の作成がわかります。

 

1.公正証書遺言書とは

 

公正証書遺言書とは、遺言者本人が公証人に口頭で遺言内容を伝え、それを元に公証人が作成し、内容について間違いがないことを証人に確認してもらう遺言書のことです。

 

公証役場に遺言者本人が出向くほか、公証人に自宅や病院、施設等に出張して来てもらう方法があります(但し、病床執務手当が発生します。)


本人が自筆するわけではないため、正しく意思表示ができる状態であれば、公正証書遺言書を作成することができます(なお、口頭で意思表示できない場合における作成方法もあります)

 

1-1.公正証書遺言書の特徴

 

公正証書遺言書は、遺言書の作成方法の中でもっともその内容に法的な誤りがなく、保管の安全性が高い方法と言えます。

 

なぜなら公証人と呼ばれる法律の専門家の関与の元で作成されるため、法律的な矛盾点やミスがなく、原本を公証役場で保管してくれるからです(ごく稀に人為的ミスによる無効事例はあるようです)

 

内容の信憑性、保管の安全性がほかの作成方法より優れているため、遺言書の作成を考える人の多くが採用している作成方法です。

 

遺言書の種類による特徴と作成方法

種類

内容の法的な誤り

保管の安全性

公正証書遺言書

ない

高い

自筆証書遺言書

(本人保管)

ありうる

低い場合がある

自筆証書遺言書

(法務局保管)

ありうる

高い

秘密証書遺言書

ありうる

低い場合がある

 

公証役場は全国におよそ300箇所あるため、足を運びやすい場所を選ぶことができます。

公証役場の場所を調べたい方は、日本公証人協会の公証役場一覧からお探しください。

 

1-2.公正証書遺言書の見つけ方

 

公正証書遺言書は、遺言者本人の死後に、公証役場の検索システムで発見することができます。

 

相続においては故人の遺志が尊重されることから、遺族はさまざまな場面で遺言書の有無を確認されます。

そのため、万が一公正証書遺言書を残していることを相続人が知らなくても、死後まずは公証役場で調べるというのが一般的な流れになります。

 

公証役場には、「遺言検索システム」というものがあり、遺族はこのシステムを使うことで、最寄りの公証役場で遺言書の存在有無を知ることができます。

 

公正証書遺言書であれば、本記事執筆現在において死亡届出に結び付いた相続人らへの通知システムはないものの、容易に調査が可能であり、証人(※作成時に2名立ち合い)がすでに亡くなっていたり、遺言書の存在を伝えていた家族が病気などで失念してしまったとしても、書いたものが無駄になる心配が少ないのです。

 

2.公正証書で遺言を遺すべき3つの理由

 

冒頭でもお伝えしましたが、公正証書遺言書は、遺言者の死後の相続トラブルを防ぐのにもっとも有効な方法です。

 

なぜなら、公正証書による遺言は、以下の3つの点を備えていることから、ほかの種類の遺言書よりも確実で安全だと言えるからです。

 

・法的な誤りがない

改ざんや紛失の心配がなく、安全に保管できる

・死後すぐに相続手続きに入れる

 

それぞれ具体的にその理由を見ていきましょう。

2-1.公正証書で遺言を遺すべき理由①:法的な誤りがない

 

公正証書による遺言書は、公証人と呼ばれる法律の専門家が書きます。

 

遺言者本人が遺言したい内容を公証人に公証役場で伝え、その内容を元に公証人が作成するのです。

 

公証人とは、高度な法的知識と豊富な法律実務経験を有している法律の専門家(元検察官や元裁判官が多い)が、公募に応じたうえで法務大臣に任命されてなれるもの。


その公証人が、中立的な立場で、遺言の内容に矛盾や法的に無効な部分が生じないように遺言書を作成してくれるので、法的な誤りが制度上は起こり得ないのです(ごく稀に人為的ミスによる無効事例はあるようです)

 

 

自筆証書遺言書では法的な誤りが起こり得る


自筆証書遺言書は、遺言者本人の手書きであれば、思い立った時にいつでもどこでも書くことができるものです。

しかし、法的な知識のない者が、相続人の権利を考慮せずに書き上げた遺言書は、結果的に当事者同士の話し合いを引き起こし、場合によっては家庭裁判所での決着をあおぐことになるのです。

 

具体的には、以下のような事態が起こり得ます。

 

・相続人の遺留分の未考慮(※遺留分を侵害する遺言自体が無効になるわけではありません。)

・法定相続人の洗い出し不足、相続人の範囲の勘違い

・記載漏れ財産への対処不足

 

このような事態が起こると、遺言書記載通りの内容が実現できなくなったり、相続人はそれぞれの相続分を自分たちの話し合いによって決めなければいけなくなったりするのです。場合によっては、遺言書全体が無効になる可能性も否定できません。もし相続人間での遺産分割協議で合意に至らなければ、話し合いは弁護士が代理人として介入するか、遺産分割調停等として裁判所に持ち込まれます。

 

残される家族のために良かれと思って書いた遺言書によって、かえって遺族が相続争いをすることになるのでは、本末転倒と言えるでしょう。

 

遺言書が自己満足なものにならないよう、自筆証書遺言書を書く場合には、法的な誤りがないか、専門家の客観的な意見を取り入れることが大切です。

 

2-2.公正証書で遺言を遺すべき理由②:安全に保管できる

 

公正証書として作成した遺言書の原本は、公証役場に保管されます。

 

公証役場にある原本は、門外不出で秘密情報が保持されたうえ、厳格に管理されます。

万が一公証役場が自然災害などに見舞われ、役場ごと遺言書原本が紛失してしまっても、公証役場以外の場所で電子化されてデータベースに残しているため、謄本(写し)を請求することができるのです。

 

自筆証書遺言書では紛失や改ざんの心配がある


自筆証書遺言書は、基本的に遺言者本人が保管場所を選んで保管します。

その場合、保管場所によっては以下のようなリスクが切り離せないのです。


自筆証書遺言書の保管場所によるリスク

自宅に置いておく

・誤って破棄する

・火災や洪水、津波などの災害で紛失する

・だれかによって改ざんされる

・遺言書の存在を秘密にしていた場合、見つけらないことや破棄されることがある

相続人や親族に預ける

・相続人や親族が遺言者本人よりも先に亡くなったり認知症などになる

・破棄される

・改ざんされる

銀行などの金融機関に

遺言信託する

・手数料が高額

・銀行は遺言者が亡くなったことを自動的に知ることができないので、口座の存在を知らないと遺言執行されない場合がある

金融機関の

貸金庫に保管する

遺言書の内容確認が、相続を開始してからになる

 

なお、これらのリスクを回避するため、令和2年(2020年)7月10日から、法務局での自筆証書遺言書の保管制度が開始しました。自筆証書遺言書を安全に保管する場所としては非常に有効な手段ではありますが、法務局保管だからといって遺言書の内容についての保証や、法的効力が高まるといったものではないことに注意が必要です。

法務局での自筆証書遺言書の保管制度についての詳細は、法務省のページをご確認ください。

 

2-3.公正証書で遺言を遺すべき理由③:死後すぐに相続手続きに入れる

 

公正証書による遺言書は、遺言書の発見後に裁判所による「検認」の手続きが必要ありません

 

裁判所での遺言書の検認とは、相続人全員に対して遺言の存在とその内容を知らせる一方で、検認の日時点での遺言書の状態(形状、追加修正等の状態、日付、署名)を証拠として保全するための手続です。偽造や改ざんを防ぐ狙いがあります。

 

裁判所での検認には、まずは相続人確定のため、被相続人(遺言者)の死亡から出生まで遡る除籍謄本等の収集を行う必要があり、申し立ての準備から検認期日まで含めて、おおよそ2~3ヶ月かかることも珍しくありません

 

公正証書遺言書では、この検認自体が不必要なため、死後すぐに相続の手続きに移ることができるのです。

 

自筆証書遺言書には裁判所の検認が必要


法務局での保管制度を利用していない自筆証書遺言書に基づいた遺産承継手続きを実行するには、家庭裁判所の検認が必要不可欠です。

 

言い返せば、家庭裁判所の検認を受けていないと、自筆証書遺言書に基づいた遺産承継手続きができず、「遺産承継手続き上の効力」を持たないのです(※なお、検認手続きは証拠保全手続きの一種であり、法的な有効無効を判断する手続きではなく、法的な有効無効とは関係がありません。)

 

実は、故人の遺品整理などをしていて自筆証書遺言書を見つけた際に、その場でそのまま封を開けると、裁判所での検認を受けていないことについてペナルティ(過料)が課せられます。開封したからといって遺言書の内容そのものが無効になることはありませんが、検認前に、何らかの偽造や改ざんがあった可能性を疑わるからです


なお、家庭裁判所で検認手続きを行うには、以下のものが必要です。

自筆証書遺言書の検認申し立てに必要なもの

□ 遺言書(※申し立て時点では不要です。検認期日当日には原本が必須となります。)

□ 遺言書の検認の申立書(800円分の収入印紙を貼付)

□ 遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本等

□ 相続人全員の戸籍謄本(※抄本でも可)

□ 連絡用の郵便切手


例えば相続人全員分の戸籍の取り寄せだけで、相続人が明らかではない場合においては、数週間かかる場合があります。数次相続や代襲相続が発生している場合は、さらに収集が必要な戸籍謄本等の範囲が広がります。

 

これらのすべての添付書類が揃ったところで申し立てをしますが、申し立てから検認期日までの日程調整だけでも通常ヶ月前後かかるため、自筆証書遺言書の内容に基づいて遺産承継手続き可能となるのは、遺言書を発見してから速やかに申し立てをしたとしても、およそ2~3ヶ月後になるのが珍しくないのです。

 

3.公正証書遺言書の作成手順

 

公正証書遺言書は、自分で書くものではなく、遺言の内容を公証人に伝えて書いてもらうものであるとお伝えしました。

 

実際に、どのような手順を踏んで公証人に作成してもらうものなのか、作成の具体的な流れについて、以下の流れを踏まえて見ていきましょう。

 

 

STEP1:相続財産の洗い出し

 

まずは遺言者自身の財産であり、相続対象となる財産の種類とその額をすべて洗い出します。

 

重複や漏れがないよう、ひとつひとつ紙に書き出していきます。パソコンが使える人は、「Excel」などの表計算ソフトを活用するとよいでしょう。

 

遺言書を書く目的のひとつとして、「大切な人を相続争いに巻き込ませない」というものがありますが、もしも遺言書に記載のない財産が出てきてしまうと、遺言書の効力が及ばず、その分をどのように相続するかについて、法定相続人の間で遺産分割協議を行う必要が出てきます。

 

そうした事態を避けるためにも、保有している財産はたとえ少額と思ったものでも、思い出せる限り書き出してください。

 

STEP2:だれに何をどれくらい遺すかを決める

 

保有している財産の種類と額がわかったら、それぞれの相続先と金額を決めます。

 

だれに:どの相続人または個人・団体等(法定相続人以外)

何を:どの種類のどの財産を

どのくらいどれくらいの割合や額で

 

あまり複雑でない相続の場合には、この3点をしっかり整理しておけば、公証人に遺言書の作成をしてもらうことができます。

 

しかし、以下のようなケースでは、公証人に遺言書の作成を依頼する前に、行政書士や弁護士に相談をして、分割方法の検討や家庭裁判所などでの必要手続きを踏まえる必要があります。

 

・不動産以外に相続できる財産がない

・相続させたくない法定相続人がいる

 

詳しくは5.【注意】公正証書遺言書を作成する公証人に内容の相談はできないの項目でもお伝えしますが、公証人には基本的に「遺言者が決めたことを法律的な効力のある文書にしてもらう」ものであり、内容についての細かい相談や手続きの依頼はできないということを覚えておいてください。

 

これは、公証人制度は「高い中立性」が求められるためです。公証人が遺言者の意思決定に影響を及ぼす助言などはしてはならないこととされています。

 

STEP3:公証役場に作成の申し込みをする

 

公証役場に連絡をし、公正証書遺言書の作成をしたい旨を伝えます。最近では、メールでのやりとりも一般的となり、パソコンが使える人は、遺言書作成当日まで、一度も訪問せずに打ち合わせを行うことが可能です。

 

公証役場は公証人が執行する事務所のことで、全国に300ほどあります。以下の日本公証人連合会のページから自分の行きやすい場所を選んで、直接申し込みをしてください。管轄はありませんが、住所地の最寄りの公証役場を選ぶ方が多いです。

 

日本公証人連合会 公証役場一覧

 

公証人との面談日を調整し、予約した日時に4.公正証書遺言書を作成するのに必要な書類を持って公証役場を訪問します。

 

なお、遺言者本人に健康上の事由がある場合は、病院や施設、自宅などに公証人に来てもらうこともできますので、直接公証役場へご相談ください。

 

STEP4:証人を2人依頼する

 

公正証書による遺言書の作成には、証人を2名立てる必要があります。

この証人には遺言者の意思を確認し、手続が公的な様式に則って行われたことを保証してもらいます。

 

依頼する証人は、以下のいずれかの方法で立てます。

 

①遺言者本人が証人になってくれる人を探して依頼する

②司法書士や弁護士などの法律の専門家に依頼する

③公証人役場で証人を準備してもらい依頼する ※公証役場によっては断られる場合があります。

 

いずれの方法で立てた証人でも、証人としての効果は変わりませんが、証人になることができない人もいるので、注意してください。

 

【注意】証人になることができない人

・未成年者

・推定相続人(≒法定相続人)

・遺贈を受ける者(=推定相続人の資格のない人で遺産を譲り受ける人)

・「推定相続人」および「遺贈を受ける者」の、配偶者および直系血族等

 

STEP5:公証人に遺言内容を伝える

 

STEP3:公証役場に作成の申し込みをするで予約した公証人との面談日に、遺言内容のメモを用意し、公証人に口頭で作成して欲しい内容を伝えますメールでやり取りする場合は、メール本文又は内容をまとめたデータにて内容を伝えます。

 

遺言内容に法的な誤りや矛盾がないかここで確認をしてもらい、問題がなければその内容にしたがって遺言書の案を作成してもらいます。

 

STEP6:遺言書の案の確認と修正

 

遺言書の案ができると、遺言者本人にメールや郵送などで送られてきます。

内容を確認して、間違いや訂正したい箇所があれば修正を依頼します。

 

公証人が修正を反映し、遺言者本人によって遺言書案が確認されると、遺言書の作成日時を取り決めます。

 

この遺言書案の確定及び財産評価額に係る資料の提供によって、公証人手数料の金額が決まります


作成した遺言書原本は公証役場に保管されますが、作成後の保管については無料で行われます。

 

STEP7:公正証書遺言書の作成当日

 

事前に決定した公正証書遺言書の案とその修正を反映し、公正証書遺言書の作成をします。

 

この作成には遺言内容を口頭で伝えた日から1~2週間ほどかかるもので、実際にどれくらいかかるかはそれぞれの公証役場の混雑状況によります。

 

遺言書作成当日は事前に決めておいた証人2名が同席します。原則として全員が身分証明書(運転免許証等)の確認をされるため、忘れないように持参してもらってください。

 

証人の前で、遺言者本人が遺言内容の意思を改めて口頭で伝え、公証人の読み上げる遺言書と内容に相違がないかを遺言者本人および証人2名が確認をします。

 

遺言書本人・証人2名・公証人の計4名の署名捺印によって、晴れて公正証書遺言書の作成が完了します。


作成した遺言書の原本は公証役場で保管され、遺言者本人には正本と謄本が渡されます

 

!!!注意!!!

作成当日は証人も含め全員が「身分証明書類」と「印鑑」を忘れずに持参すること

 

4.公正証書遺言書を作成するのに必要な書類

 

公正証書遺言書を作成するにあたり、公証人との最初の面会の日までに用意しておくべき書類は、以下のものです。

 

公正証書遺言書の作成にあたり必要な提出書類

遺言者本人のもの

□ 実印

□ 印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)

□ 戸籍謄本(発行から3ヶ月以内のもの)

推定相続人のもの

□ 本人と相続人との関係がわかる戸籍謄本(発行から3ヶ月以内のもの)

※遺言書に記載する文言が「相続させる」の場合には、推定相続人であることの確認が必要となるため。「遺贈する」と記載する場合は省略できる場合があります。

遺贈を受ける人のもの

□ 遺贈を受ける人の住民票又は戸籍抄本の附票(発行から3ヶ月以内のもの)

不動産を相続する場合

□ 登記事項証明書

□ 直近年度の固定資産税評価証明書(または納税通知書の課税明細書

預貯金や有価証券を

相続する場合

□ 銀行名や口座番号がわかるもの

□ 証券会社や証券番号がわかるもの

 ※これらを明記しない包括的な文言の場合は省略できる場合があります。

証人のもの

□ 住所、氏名、生年月日、職業を記載したもの

 

人によって、また所有財産の種類によって集める書類の数や手間が異なるので、できるだけ余裕を持って準備するようにしてください。

 

5.【重要】公正証書遺言書を作成する公証人に内容の相談はできない

 

これまでにも何度かお伝えしてきていますが、公証役場の公証人に、遺言書の内容そのものについての相談はできません。

 

公証人に相談できる内容は「法律上無効になる/ならない」といった事項までなので、その先の解決策について一緒に考えたり、法律上の必要な手続きを一緒にしてくれるものではありません。

 

法定相続人以外の人に相続をしたい方や、どうしても相続させたくない相手がいる方など、相続について個別で心配なことがある場合には、法律の専門家に遺言の内容そのものについて相談し、必要な対策をしてから公証役場を訪れる必要があります。


特に以下の方は、遺言書を書く際だけでなく遺言が執行される際にも専門家の助けが必要になることがあるため、確実に遺言の通りに進めて欲しい場合には、遺言書に詳しい行政書士や弁護士などの専門家を頼りましょう。

 

公正証書遺言書の作成にあたり、専門家に内容の相談をした方がいい人

・相続するものが多い

・相続する相手が多い

・不動産以外に相続する金融資産が少ない

・どうしても相続させたくない相手がいる

・子どもがいなくて自分の兄弟とは疎遠である

 

上記のケースは、相続で揉めることの多いものです。

 

特に一般的なのが、遺言者本人が所有して自ら居住している土地建物があるものの、金融資産が少なく、残される家族が配偶者や子どもなど複数いる場合です。

 

その場合、遺言者本人が考えて事前に判断しておくべきことはいくつもあります。

 

・土地建物を売却するか否か

・配偶者は土地建物に住み続けることができるか否か

・金融資産は遺留分を補えるか否か

 

配偶者が住まいを失わないよう、配偶者居住権の制度も考慮しながら、相続人それぞれの遺留分(兄弟姉妹を除く)可能な限り侵害しない(※侵害しても向こうではありませんが、トラブルになりやすくなります)ように遺言書の作成前に手続きしておく必要があるものもあります。

 

こうした資産の分割方法や必要な手続き、相続争いの回避方法については、遺言書の作成実績のある専門家の意見を仰ぐのが得策です。

 

6.公正証書遺言書にかかる費用

 

公正証書遺言書の作成には、費用(公証人手数料)がかかります。

 

内容があまり複雑でなく、相続人の権利にきちんと配慮や事前対応が個人でできている内容であれば、公証人への遺言書作成手数料だけで済みます。

 

しかし、人間関係が複雑であったり、相続するものや相手が多いといったケースでは、公証人に作成を依頼する前の段階で、専門家に内容の相談をしておきます。その場合は、公証人手数料のほかに、原則として専門家報酬も必要となります。

 

それぞれのケースでかかる費用について、詳しく見ていきましょう。

6-1.公証人への手数料

 

STEP6:遺言書の案の確認と修正の項目でもお伝えしましたが、遺言書の案に修正を加え、その内容が確定すると、作成手数料の金額が決まります。

 

手数料は相続させる相手ごとに、以下の表に当てはめた合算金額で請求されます。ただし、手数料令19条にて、「遺言加算」という特別の手数料を定めており、1通の遺言公正証書における目的価額の合計額が1億円までの場合は、1万1000円を加算すると規定されていますので、最低でも1万6千円はかかります。

 

相続させたい額

手数料

100万円以下

5,000円

100万円を超え200万円以下

7,000円

200万円を超え500万円以下

11,000円

500万円を超え1,000万円以下

17,000円

1,000万円を超え3,00万円以下

23,000円

3,000万円を超え5,000万円以下

29,000円

5,000万円を超え1億円以下

43,000円

1億円を超え3億円以下

43,000円に超過額5,000万円までごとに13,000円を加算した額

3億円を超え10億円以下

95,000円に超過額5,000万円までごとに11,000円を加算した額

10億円を超える場合

249,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額

参考:日本公証人連合会 公証事務 1遺言

 

注意したいのは、上記の手数料は遺産の総額に対してではなく、「相手ごとの額」に対して発生するということです。

 

例を取って分かりやすく説明しましょう。

 

例:総額4,500万円の金融資産を3人の甥と姪に1,500万円ずつ相続させる

✖️→29,000円の手数料

◯→23,000円×3人+11,000(遺言加算)=80,000円の手数料

 

相続する資産の総額が同じでも、分割して受け取る相手ごとに手数料が発生するため、相続する相手が多いほど手数料は多くかかってきます。

 

「だれに・何を・どれくらい」という遺言書の内容が決まってからでないと手数料が確定しないのは、このためなのです。

 

6-2.専門家への報酬

 

遺言書の内容について相談したり、必要な手続きの代行や遺言書の作成そのものを依頼することのできる専門家について、それぞれの費用相場を以下にまとめました。

 

遺言内容の相談ができる法律の専門家の費用相場(消費税別)

行政書士

凡そ 5~15万円

弁護士

凡そ 10~50万円

 

遺言制度に詳しい行政書士や弁護士であれば、依頼すれば公正証書遺言書の作成支援から証人としての立ち合い、遺言執行者の指定の予諾まで引き受けてくれます。

 

まとめ

 

今回は、公正証書で遺言を残す方法についてわかりやすくお伝えしました。

 

公正証書遺言書は、いくつかある遺言書の作成方法の中で、もっとも確実で安全な方法であることをお伝えしました。

 

遺言書の種類による特徴と作成方法

種類

内容の法的な誤り

保管の安全性

公正証書遺言書

ない

高い

自筆証書遺言書

(本人保管)

ありうる

低い場合がある

自筆証書遺言書

(法務局保管)

ありうる

高い

秘密証書遺言書

ありうる

低い場合がある

 

公正証書遺言書の作成の流れは、以下の通りです。

 

公正証書遺言書の作成の流れ

STEP1:相続財産の洗い出し

STEP2:だれに・何を・どれくらい遺すのかを決める

STEP3:公証役場に作成の申し込みをする

STEP4:証人を2人依頼する

STEP5:公証人に遺言内容を伝える

STEP6:遺言書の案の確認と修正をする

STEP7:公正証書遺言書の作成当日を迎える

 

公証人に遺言内容を伝える日に、持参するべき必要書類は以下の一覧の通りです。

 

公正証書遺言書の作成にあたり必要な提出書類

遺言者本人のもの

□ 実印

□ 印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)

□ 戸籍謄本(発行から3ヶ月以内のもの)

推定相続人のもの

□ 本人と相続人との関係がわかる戸籍謄本(発行から3ヶ月以内のもの)

※遺言書に記載する文言が「相続させる」の場合には、推定相続人であることの確認が必要となるため。「遺贈する」と記載する場合は省略できる場合があります。

遺贈を受ける人のもの

□ 遺贈を受ける人の住民票又は戸籍抄本の附票(発行から3ヶ月以内のもの)

不動産を相続する場合

□ 登記事項証明書

□ 直近年度の固定資産税評価証明書(または納税通知書の課税明細書

預貯金や有価証券を

相続する場合

□ 銀行名や口座番号がわかるもの

□ 証券会社や証券番号がわかるもの

 ※これらを明記しない包括的な文言の場合は省略できる場合があります。

証人のもの

□ 住所、氏名、生年月日、職業を記載したもの

 

公証人に支払う作成手数料は、遺産の総額に対してではなく、「相手ごとの額」に対して発生するということに注意しておいてください(遺言加算11,000円にもご留意ください)。

 

相続させたい額

手数料

100万円以下

5,000円

100万円を超え200万円以下

7,000円

200万円を超え500万円以下

11,000円

500万円を超え1,000万円以下

17,000円

1,000万円を超え3,00万円以下

23,000円

3,000万円を超え5,000万円以下

29,000円

5,000万円を超え1億円以下

43,000円

1億円を超え3億円以下

43,000円に超過額5,000万円までごとに13,000円を加算した額

3億円を超え10億円以下

95,000円に超過額5,000万円までごとに11,000円を加算した額

10億円を超える場合

249,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額

 

この記事を参考に、あなたが公正証書遺言書の作成をスムーズに行い、家族に大きな安心を残すことができますように。