
「職場のルールブックとはどんなもの? 就業規則とは違うの?」
「わが社でも職場のルールブックを作りたいけれど、何をどう書けばいいのかわからない」
この記事を開いたあなたは、そのような疑問や悩みを持っていることでしょう。
「職場のルールブック」とは、「企業や団体など人が働く場所=職場において、守るべきルールやマナー、手続きのフロー、禁止事項などをわかりやすくまとめた文書や電子データ」のことです。
多くの企業では就業規則を設けているはずですが、職場のルールブックはそれとは異なり、よりわかりやすく具体的に、従業員が「どのように行動すればいいのか」「何をしてはいけないのか」の行動指針にすること等を目的としています。
【「職場のルールブック」と「就業規則」の違い】
職場のルールブック | 就業規則 | |
法的根拠 | 法的な規定なし | 労働基準法第89条により作成義務あり |
作成目的 | 業務の円滑化、職場環境の整備、組織の風土や文化醸成 | 労働条件の明確化、労使間のトラブル防止 |
記載内容 | 法的な規定なし(自由に記述可能) | 労働基準法第89条により記載事項が定められている |
日本語表現 | わかりやすい文章・表現で記載 | 比較的難しい文章・表現で記載 |
ビジュアル要素 | 図表や写真、イラストなどの掲載も可能 | 基本的には文章のみ |
届出義務 | どこにも届け出る必要なし | 労働基準法第89条により届出義務あり |
違反した場合 | 労働者が違反しても、企業はそれのみでは法的措置をとるのは難しい | (企業側も労働者側も)違反すれば法的措置を講じることが可能 |
メリット |
・従業員誰でも理解しやすいように作成できる ・細かい決まりや事例などが掲載でき、具体的な行動指針になる ・新人研修など社内教育に活用できる |
・労働者と使用者の権利と義務が明確になる ・社員が安心して働ける環境を作れる ・助成金の申請の際に使える |
一般的に、職場のルールブックには以下のような項目が記載されます。
【職場のルールブックに記載する項目例】
分類 | 項目 |
社内におけるルール |
・出勤時のルール ・退勤時のルール ・休暇取得時のルール ・貸与品の使用ルール ・職場内での呼称・言語表現のルール ・社内チャットなどのルール ・業務の分担・業務指示のルール ・業務時間外の私的交流のルール ・5S活動のルール ・その他の職場規律のルール |
対外的ルール |
・メール送信時のルール ・メールアドレスの使用に関するルール ・電話連絡時のルール ・アポイント取得時 ・来客対応時のルール ・取引先との私的交流のルール ・発注時のルール ・受注時のルール ・受注後の業務処理のルール ・納品完了時・役務提供終了時のルール ・請求書・領収書などの発行ルール |
個人情報管理のルール |
・オープンスペースの利用ルール ・SNSなどの利用ルール ・FAX送信時・郵便物送付時のルール |
ハラスメント防止のルール |
・「ハラスメント」の定義 ・「ハラスメントかも」と感じたとき、目撃したとき、相談を受けたときのルール ・叱る際のルール |
勤怠管理、副業などのルール |
・休憩時・休暇時のルール ・打刻のルール ・精神衛生や健康管理のルール ・副業などのルール ・退職時のルール |
これらのルールを定めることには以下のような意義があるため、多くの企業で職場のルールブック作成が進んでいます。
・企業理念などを周知できる
・従業員の行動指針が定まる
・トラブルやリスクを未然に防げる
・生産性が向上する
・職場環境が健全化される
そこでこの記事では、職場のルールブック作成を検討している企業やこれから作成しようという企業の方向けに、知っておきたいことをまとめました。
◎「職場のルールブック」とは
◎「職場のルールブック」と「就業規則」の違い
◎職場のルールブックを作成する意義・目的
◎職場のルールブック作成に向いている企業・団体
◎職場のルールブックに掲載する項目例
◎職場のルールブックを作成する方法
◎職場のルールブックのテンプレート
◎職場のルールブック作成の注意点
最後まで読めば、必要なことがわかるでしょう。
この記事で、あなたの会社が職場のルールブックを適切に作成できるよう願っています。
1.職場のルールブックとは
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「職場のルールブック」と聞くと、「就業規則」のようなものをイメージする方も多いでしょう。
実は、厳密にいえば両者は別ものです。
そこでまず、「職場のルールブック」とは何か、就業規則とはどう違うのかを明確にしておきましょう。
1-1.「職場のルールブック」とは
「職場のルールブック」とは、企業や団体など人が働く場所=職場において、守るべきルールやマナー、手続きのフロー、禁止事項などをわかりやすくまとめた文書です。
「社内ルールブック」「職員ハンドブック」「オフィスルールブック」などと呼ぶこともあります。
各企業・団体の方針に沿って、従業員が「どのように行動すればいいのか」「何をしてはいけないのか」を具体的に示すことで、職場におけるさまざまなシーンで各人の行動指針にすることを目的としています。
つまり、職場で何か困ったことや判断に迷うことがあった場合、職場のルールブックがあれば、そのルールに沿って行動すればいいわけです。
【職場のルールブックの記載例】

出典:株式会社エベレストコンサルティング「”自由に編集が可能”な「職場のルールブック(Word版/テンプレート・雛型)」のダウンロード販売について【社会保険労務士監修】」
これがあることで、いちいち上司に「どうすればいいでしょう?」とお伺いを立てる必要がなくなります。
また、すべての従業員が同じルール、同じ業務プロセス・業務フローで動くようになるので、業務の属人化を防ぎ、業務品質の均質化にもつながるでしょう。
【職場のルールブック(テンプレート・雛型/Wordデータ版)】
「職場のルールブックを今すぐ作りたい」という方には、テンプレートの利用がおすすめです。
「株式会社エベレストコンサルティング」と「行政書士法人エベレスト」では、「職場のルールブック(テンプレート・雛型/Wordデータ版)」を提供しています。 5分野・32項目に関して、46ページ・4万字超で記載されているWordファイルで、自由に編集、加筆できるのが特徴です。
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1-2.「職場のルールブック」と「就業規則」の違い
ただ、職場のルールに関しては、多くの企業・団体ですでに「就業規則」を定めていることでしょう。
となると、「職場のルールブックは不要」と思われるかもしれませんが、そうは言い切れません。
「職場のルールブック」は「就業規則」とは別のもので、それぞれに作成する意義が異なるからです。
まず大きな違いとして、「就業規則」は従業員10名以上の企業では作成・届出が義務づけられていて、記載内容にも規定がありますが、「職場のルールブック」を作成しなくても法的に問題はなく、内容にも何の決まりもありません。
また、作成の目的も異なり、「就業規則」は労使間のトラブルを未然に防ぐための取り決めであるのに対して、「職場のルールブック」は業務を円滑に進め、職場の環境を整え、組織としての風土や文化を醸成するためのものです。
そのため、「就業規則」は法律用語など硬い表現で書かれている一方で、「職場のルールブック」は誰でも理解できるようわかりやすい表現にするのが一般的です。
両者の違いを表にまとめましたので、以下をご覧ください。
【「職場のルールブック」と「就業規則」の違い】
職場のルールブック | 就業規則 | |
法的根拠 | 法的な規定なし | 労働基準法第89条により、「常時十人以上の労働者を使用する使用者」に作成義務あり |
作成目的 | 業務の円滑化、職場環境の整備、組織の風土や文化醸成 | 労働条件の明確化、労使間のトラブル防止 |
記載内容 |
規定なし →法令と企業理念にのっとり、以下のような内容を自由に記載する <記載事項の例> ・服装、身だしなみのルール ・電話やメールに関するルール ・オープンスペース利用のルール ・副業に関するルール ・SNS利用のルール など |
労働基準法第89条により、以下の事項を記載しなければならない <法定記載事項の例> ・始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇などについて ・賃金の決定、計算及び支払の方法、昇給などについて ・退職、退職手当、解雇について ・臨時の賃金などについて ・災害補償及び業務外の傷病扶助について など |
日本語表現 | すべての従業員が理解できるわかりやすい文章・表現で記載される | 法律用語や法的表現なども用いられ、比較的難しい文章・表現で記載される |
ビジュアル要素 | 図表や写真、イラストなどの掲載も可能 | 基本的には文章のみ |
届出義務 | どこにも届け出る必要なし | 労働基準法第89条により、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署に届出義務あり |
設置数 | 企業・団体全体に1部 | 従業員それぞれに1部ずつ |
違反した場合 | 法的根拠がないため、従業員が違反しても企業が法的措置をとるのは難しい | 法的拘束力があり、従業員が違反すれば企業は法的措置を講じることが可能 |
メリット |
・従業員誰でも理解しやすい ・細かい決まりや事例などが掲載でき、具体的な行動指針になる ・新人研修など社内教育に活用できる |
・労働者と使用者の権利と義務が明確になる ・社員が安心して働ける環境を作れる ・助成金の申請の際に使える |
2.職場のルールブックを作成する意義・目的

前述のように、職場のルールブックには就業規則とはまた別の意義・目的があります。
この章では、それについてもう少しくわしく説明しておきましょう。
【職場のルールブックを作成する意義・目的】
・企業理念などを周知できる
・従業員の行動指針が定まる
・トラブルやリスクを未然に防げる
・生産性が向上する
・職場環境が健全化される
これらに納得できれば、職場のルールブック作成に積極的に取り組むことができるでしょう。
2-1.企業理念などを周知できる
第一の意義は、従業員全体に企業理念や経営方針などを周知徹底できることです。
企業が利益を上げ、各種団体が社会に貢献するためには、経営者・管理者側と従業員側が同じ目的と価値観を共有して業務に取り組むことが求められます。
そのため、就業規則にも経営理念などを盛り込んでいる企業は多いでしょう。
ただ、就業規則は法的根拠にもとづいて作成されるため、どうしても表現が硬くなってしまい、多くの従業員にとっては理解しにくい恐れがあります。
その点、法的なしばりがない職場のルールブックでは、よりわかりやすい言葉で噛み砕いて説明することができますし、具体例や図版を混えることで興味をひくことも可能でしょう。
すべての従業員が自社の理念、方針を理解するために、職場のルールブックをうまく活用してください。
2-2.従業員の行動指針が定まる
第二の意義は、職場のルールブックが従業員の行動指針になるということです。
組織に属する従業員には、日常の業務や就業時間内の行動について、「こういう場合はどうすればいいのだろう?」と判断に迷うシーンがしばしば生じます。
もちろん勤怠や賃金など法的に重要な事項に関しては、就業規則に定められています。
ただ、表現が難しいので、「今回のこのケースではどう解釈すればいいのか?」「個別の細かい事例については判断がつかない」ということも多いでしょう。
そこで、就業規則では足りない部分を、職場のルールブックにわかりやすく記載する必要があるのです。
たとえば「就業時間」に関して、就業規則には「始業及び終業の時刻、休憩時間」などだけ記載されます。
一方、職場のルールブックには、細かいタイムテーブルを図表で記載するなど、より具体的で実際の行動に結びつけやすい表現が可能です。
【就業時間に関する記載の違い・例】

就業規則の出典:厚生労働省「モデル就業規則」
また、メールの出し方やSNSの投稿ルールなども、就業規則には記載義務がありませんので、職場のルールブックに記載しておくといいでしょう。
従業員が個人でバラバラな判断をするのを防ぎ、企業の方針や文化に沿った行動を選択できるようになります。
2-3.トラブルやリスクを未然に防げる
3つ目は、トラブルやリスクの未然防止です。
企業はさまざまな営業活動を行いますが、その中で大なり小なりトラブルやリスクは避けられません。
それらを最小限に抑えるためにも、職場のルールブックが有効に働きます。
たとえば、近年大きな問題になっているハラスメントについて、就業規則でも禁止事項などを規定している企業は多いでしょう。
ただ、微妙な問題だけに「この言い方はOK? NG?」「こんな場合はどういう叱り方をすればハラスメントにならない?」など、細かい表現や行動に関して迷う場面は出てきます。
そこで、職場のルールブックによくある事例を掲載して注意喚起することで、ハラスメントを未然に防ぐことができるわけです。
たとえば以下のような記載が考えられるでしょう。
【職場のルールブック・ハラスメントに関する記載例】

出典:厚生労働省 あかるい職場応援団「NO パワハラ 事業主向けパンフレット」をもとに編集・構成
他にも個人情報の取り扱いや安全・衛生を守るための決まり、コンプライアンスなどについても事例を混えてわかりやすく記載するといいでしょう。
従業員が判断に迷うことなく、トラブルを避けた行動を取れるようになるはずです。
2-4.生産性が向上する
職場のルールブックは、生産性の向上にもつながります。
行動指針が具体的に示されていることで、従業員が判断に迷ったり間違った行動をとったりすることが減り、スムーズに業務を進めることができるようになるでしょう。
意思決定のスピードも上がるはずです。
また、副次的な効果もあります。
ルールが明文化されることで職場環境が改善されますし、企業理念が浸透すれば従業員の連帯感やエンゲージメントも向上するでしょう。
その結果、社内コミュニケーションが円滑になり、業務効率も向上するというわけです。
2-5.職場環境が健全化される
5つ目の意義は、職場環境が健全になることです。
前項でも少し触れましたが、ルールが明文化されることで従業員には行動の規範ができます。
5S活動で職場が清潔に保たれ、ハラスメントがなくなり、従業員同士の連携は深まり、業務はスムーズに進められるようになるでしょう。
無駄なトラブルやミス、行き違いが減ることで、より働きやすい職場が実現します。
従業員のストレスも減り、モチベーションが向上するため、人材が定着しやすくなるはずです。
3.職場のルールブック作成に向いている企業・団体
前章で挙げたような効果が期待できる職場のルールブックは、どんな企業・団体にとっても作成する意味があるものです。
中でも、以下のような企業には特に向いています。
【職場のルールブック作成に向いている企業・団体】
・職場環境を改善し、生産性を上げたい企業
→「2-4.生産性が向上する」「2-5.職場環境が健全化される」で説明したように、働きやすい職場を実現し、業務効率が向上します。
・従業員間で経営理念や目標を共有し、行動規範を統一したい企業
→「2-1.企業理念などを周知できる」「2-2.従業員の行動指針が定まる」で説明したように、すべての従業員が同じ理念や目標に向かって行動できるようになります。
・社内のルールや業務フローが属人化してしまっている企業
→「2-2.従業員の行動指針が定まる」で触れたように、日常のルーティーンや業務フローなどについても定めることができるため、各人がバラバラな行動をすることがなくなります。
・ハラスメントや情報漏洩などのトラブル、リスクをなくしたい企業
→「2-3.トラブルやリスクを未然に防げる」で例を挙げたように、ハラスメント防止や個人情報管理などのルールを設けることができるため、職場で起こり得るトラブルやリスクを未然に防ぐことができます。
このような希望や課題を持っている企業・団体は、職場のルールブックが有効ですので、ぜひ作成をおすすめします。
4.職場のルールブックに掲載する項目例

前述したように、「職場のルールブック」に法的な決まりはなく、どんな内容を記載してもかまいません。
とはいえ、「わが社でつくるなら、どんなことを書けばいいのかわからない」という企業も多いでしょう。
そこでこの章では、「職場のルールブック」に何を記載するのか、その項目例を挙げておきましょう。
細かい内容は業種や業務内容、企業の理念や方針などによって異なりますので、一例として参考にしてください。
【職場のルールブックに掲載する項目例】
・社内におけるルール
・対外的ルール
・個人情報管理のルール
・ハラスメント防止のルール
・勤怠管理、副業などのルール
【「職場のルールブック」の目次例】

出典:株式会社エベレストコンサルティング「”自由に編集が可能”な「職場のルールブック(Word版/テンプレート・雛型)」のダウンロード販売について【社会保険労務士監修】」
4-1.社内におけるルール
まず最初に、社内で従業員がどのように行動すればいいのか、日常のルーティーンや業務、コミュニケーションなどに関してのルールを定めましょう。
たとえば以下のような項目が考えられます。
・出勤時のルール:あいさつについて、1日のタスク管理のしかたについてなど
・退勤時のルール:施錠について、整理整頓の決まりなど
・休暇取得時のルール:手続きのフローなど
・貸与品の使用ルール:会社支給のPC、携帯電話の扱いなど
・職場内での呼称・言語表現のルール:「名字+さん」づけ、敬語の決まりなど
・社内チャットなどのルール:テキストを中心としたやりとりについての決まりなど
・業務の分担・業務指示のルール:業務の範囲、指示系統など
・業務時間外の私的交流のルール:就業後や休日の従業員同士の付き合い方についての決まりなど
・5S活動のルール:職場環境を整える「整理(Seiri)」「整頓(Seiton)」「清掃(Seisou)」「清潔(Seiketsu)」「しつけ(Shitsuke)」の取り組みの進め方など
・その他の職場規律のルール:服装や身だしなみ、マナーなど
中には就業規則に規定されている項目もあるでしょうが、内容がダブってもかまいません。
ただ、職場のルールブックのほうは、従業員の誰もが理解して行動指針にできるよう、わかりやすく記載しましょう。
出退勤や休暇のルールなど、ケースバイケースでさまざまな対応が想定される場合は、「このような場合はこうしましょう」と事例を挙げるとより理解しやすくなります。
また、身だしなみのルールなどは、イラストや写真を使って視覚的にわかりやすくする工夫も必要でしょう。
4-2.対外的ルール
次に、顧客や取引先などとのやりとりに関するルールも必要です。
以下のような項目について決めておくとよいでしょう。
・メール送信時のルール:件名・宛名・挨拶文などの書き方、送信前のチェック、返信期限など
・メールアドレスの使用に関するルール:使用できる範囲、禁止される使い方など
・電話連絡時のルール:受けるとき、かけるときの決まりなど
・アポイント取得時・訪問時のルール:取引先へのアポの取り方、訪問する際の決まりなど
・来客対応時のルール:入館時の決まり、面談スペースの利用のしかたなど
・取引先との私的交流のルール:企業としての接待や贈答以外での付き合い方の決まりなど
・発注時のルール:下請法にのっとった発注、契約書の取り交わしなど
・受注時のルール:正確な見積りの出し方、納期の決め方など
・受注後の業務処理のルール:進捗報告のしかたなど
・納品完了時・役務提供終了時のルール:納品のしかた、伝票の処理など
・請求書・領収書などの発行ルール:請求書の記載のしかた、発行手段など
顧客や取引先とのやりとりは、企業の信用や利益を左右します。
そのため、属人化したり対応の品質にバラつきが出たりすることがないよう、具体的な応対内容をルール化しておくのがおすすめです。
伝票の書き方などは、見本を掲載するとわかりやすくなります。
また、受発注に関する一連のルールなどは、流れをフロー図にすれば視覚的に理解できますし、実行する際のチェックにも役立つでしょう。
4-3.個人情報管理のルール
企業としてかならず取り組んでほしいのが、個人情報の管理です。
個人情報保護法にのっとって正しく管理し、漏洩などの重大インシデントが生じないよう、以下のようなルールを設けるとよいでしょう。
・オープンスペースの利用ルール:人が出入りする場での個人情報の取り扱い、禁止事項など
・SNSなどの利用ルール:投稿していいこと・いけないこと、投稿前の内容チェックなど
・FAX送信時・郵便物送付時のルール:情報漏洩を防止する対策など
企業が日々の業務で扱っている情報の中には、個人情報保護法の保護対象となる「個人情報」がさまざまな形で含まれています。
顧客情報はもちろん、従業員に関する情報や取引先の担当者の情報なども管理・保護されなければなりません。
そのため、データの保管や閲覧に関しては、厳しいルールを設けて管理する必要があります。
最近では、公式アカウントをつくってSNSで情報発信する企業も増えていますので、そこからの情報漏洩にも注意が必要です。
不用意なことを投稿して企業としての信用を毀損しないよう、投稿ルールを定めてください。
また、FAXや郵便物は、どこかに置いておくだけでも情報漏洩のリスクが伴います。
そのため、デジタルデータとはまた別の管理ルールが求められるでしょう。
4-4.ハラスメント防止のルール
もうひとつ、現在の企業や団体が取り組まなければならない重要な問題が「ハラスメント対策」です。
職場のルールブックでも、ハラスメント防止のルールを取り決めておきましょう。
たとえば以下のような項目が考えられます。
・「ハラスメント」の定義:ハラスメントとは何か、どんな言葉・行動などがハラスメントに該当するのか
・「ハラスメントかも」と感じたとき、目撃したとき、相談を受けたときのルール:対応のしかた、相談窓口など
・叱る際のルール:正しい叱り方、叱られ方など
パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどが職場で発生しないよう、従業員に注意喚起する必要があります。
そのために、まずは「何がハラスメントに該当するのか」という線引き、定義を明確にしておくといいでしょう。
特によく使われがちなNGワードやNG行動については、具体的な例を挙げておくと判断に迷うことがなくなります。
また、未然防止だけでなく、事後対応のルールも重要です。
ハラスメント事案が発生した場合、どのように行動すればいいのか、社内の誰に相談すればいいのかなどを定めておきましょう。
4-5.勤怠管理、副業などのルール
そのほか、勤怠や副業などのルールも必要です。
項目としては、以下のようなものが想定されます。
・休憩時・休暇時のルール:休憩の取り方、休暇中の禁止事項など
・打刻のルール:出退勤時にタイムカードを打刻するタイミング、打刻方法など
・精神衛生や健康管理のルール:ストレスチェック、健康診断など
・副業などのルール:副業を認めている場合はそれについての決まりや禁止事項、株式運用についてなど
・退職時のルール:退職の手続き、引き継ぎ、退職金の算出方法など
このほかにも、企業によっては「研修や資格取得のルール」「福利厚生利用のルール」など必要に応じたルールを定めましょう。
前述したように、「職場のルールブック」には内容や書き方の制限はありません。
自社の業務を円滑にし、職場環境をよりよくするためのルールを考えてください。
5.職場のルールブックを作成する方法
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「わが社でも職場のルールブックをつくろう」と決めた企業が次に直面するのは、「どのように作成すればいいのか?」という疑問でしょう。
前述したように、職場のルールブックは就業規則と違って法的な決まりがないので、各企業が自由に作成してかまいません。
ただ、不備や問題が生じないか不安であれば、専門家に作成してもらうことも可能です。
そこでこの章では、職場のルールブックの作成方法3つについて説明します。
【職場のルールブックを作成する方法3つ】
・社内で独自に作成する
・外国人雇用に詳しい行政書士や社会保険労務士など専門家に依頼する
・テンプレート(有償Wordデータ)を利用して作成する
5-1.社内で人事担当者が独自に作成する
職場のルールブックは、社内で自由に作成することができます。
その場合は、以下のような流れで進めるといいでしょう。
【職場のルールブック作成の手順】
1)職場の現状を把握し、課題を明確にする
まず、ルールブックに何を記載するべきかを判断する必要があります。 そのため、従業員からアンケートや聞き取りなどで「今の職場の状況をどう感じているか」「何が問題か」といった意見を集め、職場の現状と課題を洗い出しましょう。
2)ルールブックに盛り込む項目を挙げ、優先順位をつける
洗い出された課題をもとに、ルールブックに盛り込む項目や内容をリストアップしていきます。 そして、挙がった項目に優先順位をつけてください。
優先度の高いものはルールブックでも前のほうに記載し、優先度の低いものは「本当に掲載する必要があるか」「ほかの項目と統合できないか」などを考えて整理していくといいでしょう。
3)ルールブックのたたき台をつくる
項目が整理できたら、ルールブックのたたき台をつくります。 就業規則のような難しい表現を使わず、平易な文章でまとめてください。
必要に応じて事例や具体例を盛り込んだり、図表やイラスト、写真などのビジュアル要素を取り入れたりといった工夫をして、わかりやすいルールブックを目指しましょう。
4)内容に問題ないか確認する
次に、作成したたたき台に問題がないか、内容を精査します。 法律に抵触していないか、倫理的に正しいか、項目それぞれに矛盾や重複がないかなど、細かくチェックした上で修正・調整を加えてください。
その際に、作成したメンバーだけでなく、社内の複数の部署の人に広く見てもらうことが重要です。 より客観的、俯瞰的な視点で内容を見直すことができるでしょう。
5)社内に周知する
ルールブックが完成したら、社内に周知します。 従業員すべてに1冊ずつ配布するのはもちろん、理解を促すために研修をしたり、理解度チェックのテストを実施したりといった取り組みも必要でしょう。
職場の秩序を保つため、内容が従業員間に浸透するよう工夫してください。 |
社内で独自に作成するメリット・デメリット | |
メリット |
・費用を抑えられる ・社内の独自ルールや業務フローなどを外部に知られずに済む |
デメリット |
・一から作成するのは手間と時間がかかる ・法的、倫理的に問題がないかチェックするのが難しい |
5-2.外国人雇用に詳しい行政書士や社会保険労務士など専門家に依頼する
もし、「社内で作成するのは難しい」「作成に割ける時間や人員が足りない」という場合は、専門家に依頼することも可能です。
行政書士や社会保険労務士などの中には、職場のルールブック作成を業務として請け負っている者がありますので、探して依頼するといいでしょう。
作成は、一からすべて委託することもできますし、サンプルをもとに作成したり、社内で作成する際のサポートだけしてもらったりするケースもあります。
費用は、10万円〜が相場です。
内容が複雑であったりページ数が多かったりする場合は、30万〜50万円程度かかる可能性もあります。
また、基本的にはルールブックのデータを作成してもらうだけなので、従業員へ書面で交付する場合は別途印刷・製本に費用がかかるでしょう。
行政書士や社会保険労務士などの専門家に依頼するメリット・デメリット | |
メリット |
・難しい作成業務をすべて任せることができる ・法律や倫理などに抵触しないことを、専門家に確認してもらえる |
デメリット | ・専門家費用(コスト)がかかる |
5-3.テンプレートを利用して作成する
「一からつくるのは難しいが、専門家に依頼する予算はない」という企業には、既存のテンプレートを活用して作成する方法がおすすめです。
数は少ないですが、WEBでダウンロードできる職場のルールブックのテンプレートがあります。
一般的に必要と考えられる項目について、具体的なルールの文章が記載されていますので、それをもとに自社のルールに合わせて修正していくだけで作成が可能です。
ほとんどは有料ですが、5万円前後ですので専門家に依頼するよりコストを抑えることができるでしょう。
テンプレートを利用して作成するメリット・デメリット | |
メリット |
・項目や文章を一から考える必要がなく、修正するだけで作成できる ・専門家が法的、倫理的に問題ないと確認した内容に沿って作成できる ・専門家に依頼するより低コストで作成できる |
デメリット | ・自社の独自ルールなど、テンプレートにない項目が抜け漏れする恐れがある |
「株式会社エベレストコンサルティング」と「行政書士法人エベレスト」でも、「職場のルールブック(テンプレート・雛型/Wordデータ版)」を提供しています。
前章で挙げた5分野・32項目に関して、46ページ・4万字超で記載されているWordファイルで、自由に編集、加筆できるのが特徴です。
以下がテンプレートのサンプル画像ですので、ご覧ください。
【職場のルールブック・テンプレートのサンプル画像】

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出典:株式会社エベレストコンサルティング「”自由に編集が可能”な「職場のルールブック(Word版/テンプレート・雛型)」のダウンロード販売について【社会保険労務士監修】」
上図のように、書式だけでなく実際にルールを定める文章も記載されています。
これをもとに自社のルールに沿ってカスタマイズするだけで、必要十分な内容の職場のルールブックが簡単に作成できるでしょう。
「利用したい!」という方は、詳細を以下でご確認の上、リンク先からダウンロードしてください。
「職場のルールブック(テンプレート・雛型/Wordデータ版)」Ver.1.2 | |
提供事業者 |
株式会社エベレストコンサルティング 行政書士法人エベレスト |
公開日 | 2024年6月5日 |
記載内容 | 5分野・32項目 |
記載量 | 46ページ・4万字超 |
料金 | 5万5,000円(税込)※2025年1月現在位の価格です。 |
6.職場のルールブック作成の注意点
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ここまで職場のルールブックについて、内容から作り方までを説明しましたので、あなたの会社でもすぐに作成に取り掛かれるでしょう。
ただ、作成にあたっては、注意してほしい点がいくつかあります。
職場のルールブックの内容をよりわかりやすく正しくし、従業員に浸透させるためのポイントです。
・企業理念に則り法令を遵守する
・ルールを煩雑にしすぎない
・部署横断的に広く意見を募る
・研修などで社内に周知徹底する
・定期的に内容を見直す
それぞれくわしく説明しますので、ぜひこれらを守って進めてください。
6-1.企業理念に則り法令を遵守する
まず職場のルールブックは、企業理念に沿った内容であること、法令を守っていることが必須です。
前述したように、職場のルールブックに法的な決まりはなく、各企業・団体が自由な内容で作成できます。
とはいえ、法律に違反した内容はもちろん認められません。
特に、労働契約法や労働基準法といった、労働者の権利・義務に関わる法律については十分に理解した上で、各項目が違反していないか確認してください。
また、職場のルールブックは、各企業において従業員の行動指針となるものですから、企業の理念や方針に沿っていなければなりません。
もし企業が目指す方向性と異なる内容があれば、職場に矛盾や混乱が生じる恐れがあるためです。
作成時には、「企業理念」と「法令」を特に意識して、随時チェックしながら進めてください。
6-2.ルールを煩雑にしすぎない
次に、掲載するルールが煩雑になりすぎないよう、注意する必要もあります。
ルールブック作成にあたって、職場の課題を洗い出していくと、「これも掲載したほうがいいのではないか」「あれも必要な気がする」と、どんどん項目が増えていくでしょう。
ただ、それをすべて掲載するのは避けてください。
項目が多すぎたり内容が細かすぎたりすると、従業員が知りたいことを見つけにくくなってしまいます。
そもそも煩雑で膨大なルールでは、従業員が覚えられませんし、混乱が生じます。
たとえば、似たような内容の項目は統合する、優先度の低い内容は思い切って割愛するといった方法で、必要十分な内容にまとまるよう整理してください。
6-3.部署横断的に広く意見を募る
また、特定のメンバーだけで作成するのではなく、部署横断的に広く意見を求めることも重要です。
職場のルールブック作成にあたっては、作成チームを組んだり担当者を決めたりするはずです。
ただ、そのチームだけで考えていると、視野が狭くなってしまう恐れがあります。
たとえば、バックオフィスである総務部が作成を担当した場合、会社側が守ってほしいルールに関しては、実態に沿った必要十分なルールが作れるでしょう。
その反面、現場の従業員同士が困っていることについては、リアルな課題を把握することが難しいかもしれません。
そのため、現場では「必要なことが定められていない」「このルールは業務の実態に沿っていない」といった齟齬が生じる恐れがあります。
このような問題を避けるには、ルールブックにさまざまな部署の意見を反映させるといいでしょう。
最初から作成チームに複数部署のメンバーをアサインしてもいいですし、それが難しければ、たたき台作成や内容精査などのポイントごとに意見を募るのも有益です。
どの部署に所属する従業員でもすべて納得して遵守できるルールをつくるため、幅広い部署からフィードバックを受けてください。
6-4.研修などで社内に周知徹底する
職場のルールブックが完成したら、研修やセミナーなどを実施して、社内全体に周知徹底しましょう。
ルールは作って終わるものではありません。
すべての人が理解し、守れるようになってこそ意味を持ちます。
せっかくのルールでも、「知らなかった」「よくわからなかった」という人が違反してしまうようでは無用の長物です。
そこで、従業員全員がルールを理解できるような施策を行うといいでしょう。
たとえば以下のようなものが考えられます。
・部署ごとに研修を実施する
・社内セミナーを実施する
・定期的にルールブックの内容に関する理解度チェックテストを行う
・オフィス内にルールを掲示する
・週ごとに「◯◯ルールを守る週間」と定めて意識を高める など
いずれの施策も、ただルールを文章として覚えればいいという方針では意味がありません。
「なぜこのルールが必要なのか」「これを守ると職場がどのように改善されるか」まで理解できるよう、わかりやすく説明してください。
そこまで深く納得がえられてこそ、ルールが実効性を持つでしょう。
6-5.定期的に内容を見直す
また、定期的に内容を見直すことも必要です。
というのも、実際にルールブックを運用してみることで、はじめて気づく問題点や不備があるからです。
ルールブックを共有してある程度の期間が過ぎたら、従業員に「ルールに何か問題はないか」「不備や不便はないか」といった意見を募り、それを踏まえて修正を加えていきましょう。
さらに、法律の改正や社会環境の変化、社内での業務プロセス変更などにあわせて、ルールを変更する必要も生じます。
実状に沿わないルールでは、職場の秩序が正しく保たれないためです。
「労働基準法が変わった」「ハラスメントに関する新たな条例ができた」「下請法が改正されて取引先とのやりとりを見直す必要がある」「効率化のために業務プロセスを改善した」といった動きがあった際には、ただちに職場のルールブックも改訂してください。
もし特別なことがなくても、たとえば1年に1回など定期的な見直しを行うことで、つねに現状に即したルールを保っていくといいでしょう。
7.まとめ
いかがでしたか?
職場のルールブックについて、よく理解できたかと思います。
ではあらためて、記事の要点をまとめておきましょう。
◎「職場のルールブック」とは「職場において守るべきルールやマナー、手続きのフロー、禁止事項などをわかりやすくまとめた文書」
◎「職場のルールブック」と「就業規則」の違いは以下の通り
職場のルールブック | 就業規則 | |
法的根拠 | 法的な規定なし | 労働基準法第89条により作成義務あり |
作成目的 | 業務の円滑化、職場環境の整備、組織の風土や文化醸成 | 労働条件の明確化、労使間のトラブル防止 |
記載内容 | 規定なし | 労働基準法第89条により記載事項が定められている |
日本語表現 | わかりやすい文章・表現で記載 | 比較的難しい文章・表現で記載 |
ビジュアル要素 | 図表や写真、イラストなどの掲載も可能 | 基本的には文章のみ |
届出義務 | どこにも届け出る必要なし | 労働基準法第89条により届出義務あり |
違反した場合 | 違反しても法的措置をとるのは難しい | 違反すれば法的措置を講じることが可能 |
メリット |
・従業員誰でも理解しやすい ・細かい決まりや事例などが掲載でき、具体的な行動指針になる ・新人研修など社内教育に活用できる |
・労働者と使用者の権利と義務が明確になる ・社員が安心して働ける環境を作れる ・助成金の申請の際に使える |
◎職場のルールブックを作成する意義・目的は、
・企業理念などを周知できる
・従業員の行動指針が定まる
・トラブルやリスクを未然に防げる
・生産性が向上する
・職場環境が健全化される
◎職場のルールブック作成に向いている企業・団体は、
・職場環境を改善し、生産性を上げたい企業
・従業員間で経営理念や目標を共有し、行動規範を統一したい企業
・社内のルールや業務フローが属人化してしまっている企業
・ハラスメントや情報漏洩などのトラブル、リスクをなくしたい企業
◎職場のルールブックに掲載する項目例は以下の通り
分類 | 項目 |
社内におけるルール |
・出退勤時のルール ・休暇取得時のルール ・業務の分担・業務指示のルール など |
対外的ルール |
・メール送信時のルール ・受発注時のルール ・請求書・領収書などの発行ルール など |
個人情報管理のルール |
・オープンスペースの利用ルール ・SNSなどの利用ルール など |
ハラスメント防止のルール |
・「ハラスメント」の定義 ・「ハラスメントかも」と感じたときのルール など |
勤怠管理、副業などのルール |
・休憩時・休暇時のルール ・精神衛生や健康管理のルール ・副業などのルール など |
◎職場のルールブックを作成する方法は、
・社内で人事労務担当者が自ら作成する
・外国人雇用に詳しい行政書士や「社会保険労務士」などの専門家に依頼する
・テンプレート(有償Wordデータ)を利用して作成する
◎職場のルールブック作成の注意点は、
・企業理念に則り法令を遵守する
・ルールを煩雑にしすぎない
・部署横断的に広く意見を募る
・研修などで社内に周知徹底する
・定期的に内容を見直す
これを踏まえて、あなたの会社が職場のルールブックを正しく作成し、快適な職場環境を実現できるよう願っています。