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■HOME主な取扱業務相続手続き代行・遺言作成支援>④遺産分割協議(・遺言執行)

最終更新日:2024年4月8日(月)

文責:行政書士 野村 篤司

遺産分割協議の実施と遺産分割協議書(証明書)の作成

遺産分割協議の実施、合意成立後の遺産分割協議書の作成・署名押印

遺産分割協議とは、亡くなられた方が残した財産を、相続人がどのように分けるかということについて、相続人全員が話し合うことを言います。民法では、「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」(第906条)と指針が定められています。

 

この遺産分割協議を行わなければ、承継者が決まらないため、実際に相続手続きを行うことができません。「相続人の確定(戸籍の収集)」「相続財産の棚卸し」「相続手続き方法の確認」が終わり次第、相続人全員による話し合いをスタートさせます。

この遺産分割協議を行うに当たってのポイントは、次の3点です。

 

①相続人「全員」が協議に参加していること

②相続人全員の意思に基づく「合意」であること

③きちんと書面にわかりやすく書くこと

 

 例えば、相続人全員ではなく、特定の相続人を無視して行った協議は「無効」になります。あくまで相続人全員が遺産分割協議に参加し、全員の実印でのハンコがあることが必要になります。

 

また「合意」が必要であるため、当然ながら、意思能力、判断能力が必要になります。話し合いの場に参加していても、認知症等で話し合いの内容が理解できない場合は、その方は「合意」しているとは言えないでしょう。この場合も、実質的に「無効」となります。

※この場合は、認知症等で判断能力を有していない相続人に対して「後見(又は保佐、補助)開始の審判申し立て」を行い、代わりに意思表示を行う法定代理人(成年後見人・保佐人・補助人と言います。)を選任する必要があります。

 

なお、合意自体は話し合いのみで成立しますが、後に合意内容に従って手続きをしなければなりませんので、しっかりと「書面」にすることが必要になります。この書面を「遺産分割協議書(又は遺産分割証明書)」と言います。

 

相続分譲渡(相続分譲渡証明書)とは?

相続人の中で、「遺産分割協議から離脱したい」という場合があります。その場合、相続人又は全く関係のない第三者(※相続分取戻請求される場合があります)に対して、有償又は無償にて、その「相続できる権利割合」である「相続分」を譲渡することができ、期限もありません。譲渡を受けた方は、遺産分割協議の参加する立場を得ることになります。

 

相続人が多数いるようなケースでは、とても役に立つ制度です。有効に活用したいものですね。なお、「相続放棄」と異なり、「相続人」という立場は変わらないため、「債務」については、債権者との間で負担義務を負うこととなります。

 

有効な遺言がある場合は?

有効な遺言がある場合で、その遺言が全財産を対象にしている場合は、遺産分割協議は不要です。この場合は、遺言書の記載内容に従って、相続手続きを進めることが必要です。

公正証書遺言ではない場合(自筆証書遺言)は、相続手続きを進める前提として、「家庭裁判所への検認申し立て」を行うことが必要になります。これは、家庭裁判所において、相続人全員を呼び、参加した相続人の目の前で遺言に書かれている内容や筆跡、印鑑について確認する手続きです。

 

なお、遺言に基づいて相続手続きを行う場合は、「遺言執行者(いごんしっこうしゃ)」がいる場合といない場合では、大きく異なります。遺言執行者が指定されているケースでは、遺言執行者に相続手続きの権限が与えられているために、やはりスムーズに進みます。いない場合は、有効な遺言があっても、相続人全人のハンコが必要になるというケースもあります。


遺言執行者がいないケースであっても、後から家庭裁判所に対して「遺言執行者選任申し立て」を行うことができます。但し、弁護士や司法書士等の専門家が就任した場合は、もちろん費用が発生するため、注意が必要です。相続人代表者又はあらかじめ見積もりを取得した専門家を推薦するようにし、その専門家とも十分に協議するようにしましょう。

 

遺産分割協議を始める時期は?

遺産分割協議自体に期限はありません。10か月以内にしなくてはならないという説明不足のホームページもたまに見かけますが、遺産分割協議は「いつでも」行うことができます(民法第907条第1項)。但し、相続法改正により、「特別受益と寄与分については、原則として「相続の開始から10年以内」に制限されていますので、その点は注意が必要です(もっとも遺産分割協議自体は従来通り10年以上経過していても実施することが出来ます)。

 

しかしながら、相続税の申告義務がある場合は、注意が必要です。相続税の申告期限は「被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内」ですが、ここまでに遺産分割協議がまとまっている状態で申告するか、まとまっていない状態で申告するかで、「評価減等の特例制度が使えるか否か」という点が影響します。

 

なお、遺産分割協議がまとまったのが、「10カ月が経過する前日でした」では遅い(準備ができない)ですので、おおむね8カ月以内までには遺産分割協議内容をまとめ、残り2カ月で遺産分割協議書の作成、署名押印手配、相続税の申告書作成及び納税資金を準備する手続きを行うことを推奨します。早く相続税を申告したことでメリットは何もありませんが、期限後の申告には明らかなデメリットがあるため、注意しましょう。

※相続税申告がない場合でも、1周期を迎えるころまでには、きちんと話し合いを終わらせている方々が多い印象です。中には、5年以上揉めてしまっているケースや、10年近くそのままという方々もいらっしゃいますが、期限がないからといってあまり長いこと放置することはおススメしません。

 

【相続手続きの進め方】

①相続人の確定(戸籍の収集)

死亡から~2カ月以内

②相続財産の棚卸し

~3カ月以内

③相続手続き方法の確認

~3カ月以内

④遺産分割協議(又は遺言執行)

~8カ月以内
⑤相続手続きの実行(相続財産の分配) ~概ね1年以内

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